アビシュカ

アビシュカの生涯と功績

アビシュカ（Abišqa）は1260年まで生きた人物で、チャガタイ・ウルスの第6代当主です。彼はモンゴルの偉大な指導者チンギス・カンの次男、チャガタイの孫ブリの息子として生まれました。アビシュカの名前は『集史』ではアービーシュケやアービシュガとして記録されていますが、中国の歴史書『元史』などには名前が見当たりません。

家族背景と政治的環境

アビシュカの父、ブリはルーシ遠征の際にオゴデイの家系に属するグユクとともに、モンゴルの総司令官であるバトゥを侮辱する事件がありました。これが原因でブリとバトゥの間に深い敵対的感情が生まれ、後にはブリがバトゥの手によって命を落としてしまいます。この経緯から、ブリの子供たちには反モンケ政権の意識が強く根付いていたと考えられています。

モンケ・カアンの治世においては、東アジアと西アジアの征服計画が進行しており、アビシュカは皇族としてその征服軍に参加しました。彼はクビライが指揮する遠征軍に加わり、雲南・大理の征服に従軍します。また、モンケが親征中に病に倒れた際、アビシュカはウリヤンカダイと共に陳朝や南宋を転戦しました。

帝位継承戦争とその運命

モンケが急死した後、帝位を巡ってクビライとアリク・ブケの間で激しい継承戦争が発生しました。アリク・ブケ派はカラコルムを拠点にモンケ政権を引き継ぎ、ブリの子供たち、特にアビシュカ与アジキはクビライ派として戦いに参戦しました。

チャガタイ・ウルスは当時、アリク・ブケ派として行動していたため、クビライはアビシュカを派遣して親クビライ派に取り込もうと試みました。しかし、その途中でアビシュカはアリク・ブケ派に捕らえられ、最終的にはモンケの庶子アスタイによって命を奪われてしまいます。アビシュカの死後、チャガタイ・ウルスはアルグの裏切りによってクビライ派へ転向し、帝位継承戦争はクビライの勝利で終わることになります。

アビシュカの遺族と影響

アビシュカの死後、弟のアジキは引き続きクビライ派として戦い続けました。彼の戦いは兄を殺したアリク・ブケやアスタイへの復讐を含み、クビライは最終的に二人の許しを与えました。『集史』によれば、アビシュカにはオルグという息子がいたと伝わっていますが、彼の後の動向については詳細が残されていません。

アビシュカの生涯は、モンゴル帝国の動乱期における人間ドラマを色濃く映し出しています。彼の生きた時代は、権力闘争や家族間の対立が激化した時代であり、彼自身もまたその渦中で翻弄された一人の貴族であったと言えるでしょう。

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