アビドス

アビドス：オシリス信仰の中心地と古代エジプトの歴史を語る遺跡

アビドス（Abydos、アラビア語: أبيدوس‎）は、ナイル川西岸の砂漠に位置する、古代エジプトにおける重要な聖地です。エジプト神話において、冥府の神オシリスの復活の地として知られ、古王国時代からその信仰の中心地として栄えてきました。

オシドスとオシリス信仰

当初、アビドスの墓地の守護神はケンティアメンティウ（西方の第一人者）でしたが、古王国時代後期以降、オシリス信仰が隆盛するにつれて、故王がオシリスと同一視される教義が確立されました。これによりアビドスはオシリス信仰の総本山としての地位を確固たるものとし、上エジプトの主要都市ティニスの墓地としても機能しました。第5王朝にはオシリス神の祭儀の中心地となり、遅くとも第12王朝時代には、オシリスの死と復活を描いた聖劇が上演されるようになりました。

ファラオたちの神殿建設

歴代のファラオたちはアビドス神殿の建設や、自身の記念神殿の建設に力を注ぎました。中でもセティ1世の神殿は、大部分が保存されており、7柱の神々に捧げられた7つの礼拝堂には精緻な彩色浮彫が施されています。神殿の廊下の壁面には「アビドス王名表」が刻まれています。この王名表は、初代ファラオから始まる歴代のファラオの名前が順に記された貴重な碑文であり、エジプトの歴史解明に重要な役割を果たしています。

多様な墓地と考古学的意義

アビドスの神殿周辺には、プトレマイオス朝時代から古代ローマ時代に至るまで、様々な時代の墓地が広がっています。オシリスの近くに埋葬されたいと願う人々の巡礼地となり、多くの墓が造られました。中には、アビドスに葬られない場合でも、死者の名前を記した石を置く習慣があったようで、そのような石が多数発見されています。19世紀にはエジプト第1王朝と第2王朝の王の墳墓も発見されましたが、それらの多くは死体を埋葬しない記念碑と考えられています。

アビドスは、これらの遺跡の存在から、エジプト考古学において非常に重要な場所とみなされており、現在でも考古学者による発掘調査が続けられています。著名な出土品としては「イルティセン碑文」などが挙げられます。

オーパーツ説の真相

アビドスの壁画には、ヘリコプターや潜水艦、戦闘機などに見える絵が描かれているとして、かつてオーパーツ（時代錯誤な遺物）として取り上げられたことがありました。しかし、これは当時の王を称える神殿の文字を彫り、その後新しい王が即位すると漆喰で塗りつぶして新たな文字を彫り込む作業を繰り返す中で、時間の経過とともに漆喰が剥がれ落ち、古い文字の一部が露出した結果、現代の目にはそのような形に見えたに過ぎないことが解明されています。

アビドス研究の現状と未来

アビドスは、古代エジプト文明の宗教、政治、社会、文化など多岐にわたる側面を理解するための貴重な情報源となっています。今後ますますの発掘調査や研究が進むことで、これまで知られていない新たな発見が期待され、古代エジプトの歴史解明に大きく貢献するものと期待されています。

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