アフガニスタン国陸軍特殊作戦コマンド

アフガニスタン国陸軍特殊作戦コマンド(ANASOC)とは

アフガニスタン国陸軍特殊作戦コマンド（ANASOC）は、アフガニスタン陸軍における特殊部隊です。その規模は国軍全体の約7%に過ぎませんが、アフガニスタン紛争においては、戦闘の7割から8割に関与したとされています。

歴史

ANASOCの歴史は、1970年代まで遡ります。当時、第26空挺大隊や第444コマンド部隊旅団など、複数の精鋭部隊が存在していました。しかし、1980年代には、これらの部隊も反乱や待ち伏せ攻撃によって大きな損害を受け、再編を余儀なくされました。

特殊部隊の誕生

2007年7月24日、アフガニスタンの特殊部隊が正式に誕生しました。初代司令官はファリード・アフマディ大佐。隊員はアメリカ陸軍特殊部隊群による3ヶ月間の訓練を受け、アメリカ軍の装備を完備していました。彼らは、襲撃、直接行動、偵察といった特殊作戦能力を備え、アフガニスタン政府に対する迅速な対応部隊として期待されました。

訓練は、カブール郊外のモアヘッドコマンドー訓練センターで行われました。ここでは、アフガニスタン統合安全保障移行軍（CSTC-A）、アメリカ特殊作戦軍、フランス特殊作戦司令部などが訓練を支援しました。

ANASOCの設立

2011年半ば、アフガニスタン国軍はANASOCと、その上位組織であるアフガニスタン国軍特殊作戦司令部を設立しました。当初、ANASOCは7,809人の特殊部隊員と646人の支援要員で構成されていました。

2012年7月には、ANASOCは師団レベルの組織として正式に発足。1万人から1.1万人の兵力を擁するまでに成長しました。また、ANASOCと連携するため、アフガニスタン空軍特別任務航空団も設立されました。

同年同月、アフガニスタン特殊部隊は初の夜間作戦を成功させました。この作戦には、アフガニスタンのパイロットが操縦するヘリコプター4機と、50人以上のアフガニスタン特殊部隊員、そしてアメリカ特殊作戦部隊が参加し、要注意人物の逮捕に成功しました。

2013年3月、アメリカ特殊部隊はヴァルダク州の基地をアフガニスタン特殊部隊に引き渡し、以降、アフガニスタン特殊部隊は反政府勢力との戦闘で主導的な役割を担うようになりました。同年4月には、ナンガルハル州で反政府勢力22人を殺害、10人を捕らえるなどの戦果を上げています。

2014年9月には、ガズニー州で発生した襲撃事件において、アフガニスタン特殊部隊が迅速に展開し、地区の中心部に対する脅威を排除しました。

2021年ターリバーン攻勢

2021年のターリバーン攻勢では、トルコがアフガニスタン特殊部隊の訓練を引き受けることを決定しました。しかし、タリバンの攻撃は激しく、特殊部隊は孤立無援の状況に陥ることもありました。

同年6月、50人の特殊部隊員がタリバンからダウラット・アバドを奪還したものの、援軍を得られず包囲され、壊滅。この戦闘で、著名な特殊部隊司令官であるソフラブ・アジミ少佐を含む24名が死亡し、アフガニスタン国軍の士気に大きな影響を与えました。

カブール陥落後、一部の特殊部隊員はパンジシールに移動し、民族抵抗戦線に合流したと報じられています。また、約500～600人の兵士がカブールでの降伏を拒否し、ハーミッド・カルザイ国際空港でアメリカ軍と合流し、空港の警備を支援しました。

イギリスは、アフガニスタン軍敗北後、イギリスに避難したアフガニスタン特殊部隊員をイギリス陸軍に採用することを検討していると報じられています。

ロシアによるウクライナ侵攻への関与

米軍撤退後、アフガニスタンに残された元隊員が、ロシアや中国、イランなどの反米国に雇用されることへの懸念が指摘されました。そして実際に、2022年ロシアのウクライナ侵攻において、ロシア側がSNSを通じてイランに逃れた元ANASOC隊員を募集していることが明らかになりました。報酬は月20万円相当で、イラン政府やイスラム革命防衛隊、在アフガニスタンのイラン大使館が協力しているとされています。

まとめ

ANASOCは、アフガニスタン紛争において重要な役割を果たした精鋭部隊です。しかし、2021年のタリバン攻勢や、その後の混乱の中で、多くの隊員が失われ、あるいは国外に流出しました。彼らの今後の動向は、アフガニスタンだけでなく、国際社会にとっても重要な関心事となっています。

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