アフガニスタン＝中国国境

アフガニスタンと中華人民共和国の国境は、76キロメートルと短いながらも、歴史的に重要な意味を持つ境界線です。この国境は、パキスタン実効支配下のギルギット・バルティスタン州との三国国境を起点とし、タジキスタンとの三国国境を終点としています。

地理的特徴

この国境は、アフガニスタンの領土から北東に細長く伸びるワハーン回廊の末端部に位置しています。中国側は、新疆ウイグル自治区タシュクルガン・タジク自治県のカラチグ谷にあたります。両国側とも自然保護区に指定されており、アフガニスタン側はワハーン回廊自然保護区、中国側はタシュクルガン自然保護区として、豊かな自然が保護されています。国境にはワフジール峠が位置しています。アフガニスタンの標準時はUTC+4:30、中国はUTC+08:00であり、国境における時差は3.5時間と、世界で最も大きな時差がある国境の一つです。

歴史的背景

この地域は、古代からシルクロードの主要な経路でした。7世紀には、玄奘三蔵がインドから中国へ帰る際にこのルートを利用したとされています。19世紀末のグレート・ゲーム時代には、1895年にイギリスとロシアの間で国境線が合意されましたが、アフガニスタンと中国間での合意は後になります。最終的に、両国間で正式な国境線が確定したのは1963年のことです。当時、アフガニスタンは王国でした。

近年では、この地域を通るワフジール峠が、薬物の密輸ルートとして利用されていることが指摘されています。アフガニスタンで製造されたアヘンが、このルートを通じて中国へ密輸されているとされています。経済的な理由やタリバンとの戦闘を背景に、アフガニスタンはワハーン回廊の国境開放を中国に打診しています。しかし、中国は新疆ウイグル自治区の情勢不安を理由に、この要求に抵抗しています。2009年には、アメリカ合衆国が中国に国境開放を要請したとの報道もあります。

国境を越える交通路

国境を越える主な交通路はワフジール峠です。この峠は、シルクロードの時代から少なくとも千年以上利用されてきました。また、小パミールの東端には、テゲルマンスー峠も存在します。これらの峠は、中国側では一般の訪問者に対して閉鎖されていますが、地元住民や遊牧民には通行が許可されています。

この国境は、地理的、歴史的、そして現代的な様々な要素が複雑に絡み合った場所であり、今後の動向が注目される地域です。

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