グレート・ゲーム

グレート・ゲーム

グレート・ゲーム（The Great Game）は、イギリス帝国とロシア帝国が中央アジアでの覇権を巡って繰り広げた戦略的対立を指す言葉です。この言葉は1840年にアーサー・コノリーによって初めて使用され、後にラドヤード・キップリングの小説『少年キム』に取り上げられることで広く知られるようになりました。19世紀から20世紀の初頭にかけて、英露両国は中央アジアで複雑な情報戦と政治的駆け引きを展開し、その状況は時に直接的な軍事衝突へと繋がりました。 

グレート・ゲームの歴史的背景

グレート・ゲームは、主にアフガニスタンを巡る英露の紛争から成り立っています。ロシアは南下政策を進め、アフガニスタンを通じてインドへの進出を狙いました。一方、イギリスはロシアの進出が大英帝国に対する脅威であると考え、アフガニスタンを緩衝国家として保持したいという思惑がありました。このため、両国はアフガニスタンを舞台に策謀を巡らせ、複数の戦争と外交交渉を経ていくことになります。

第1期グレート・ゲーム（1813年～1907年）

第1期は、主に1813年から1907年の英露協商までの期間を指します。この時期の特徴は、アフガニスタンでの二度のアングロ・アフガニスタン戦争と、ロシアの中央アジアへの進出です。1820年代、ロシアはアフガニスタンを経由してインドへと南下しようとし、イギリスはこれを阻止するために戦争に踏み切りました。この戦争では、イギリスは現地に傀儡政権を樹立しようとしましたが、結果的には大きな損害を被りました。 

1878年には、再度アフガニスタンに対して武力行使を行い、第二次アングロ・アフガニスタン戦争を展開します。この戦争でも、イギリスは一時的に勝利を収めましたが、多数の反乱が発生し、イギリスの影響力は制約を受けます。1880年代末には、正式な国境を定めるための英露の交渉が行われ、アフガニスタンは緩衝国としての地位を確立しました。 

第2期グレート・ゲーム（1917年～第二次世界大戦）

第2期は、1917年のロシア革命から第二次世界大戦の勃発までを含みます。この期間、イギリスはロシア帝国からソビエト連邦への移行を経験し、状況は一変します。ロシア革命後、アフガニスタンは完全な独立を果たし、イギリスはアフガニスタンとの関係を再構築する必要に迫られました。1921年にはアフガニスタンとソ連の友好条約が締結され、イギリスの影響は弱まりました。

新グレート・ゲーム

21世紀に入ると、「新グレート・ゲーム」と呼ばれる現代の地域競争が始まります。この新たなゲームには、アフガニスタンにおける多国籍軍とタリバンの衝突が含まれ、さまざまな国が利益を求めて地域に介入しています。この複雑な状況は、過去のグレート・ゲームからの直接的な継承を感じさせるものであり、現在も国際関係に大きな影響を与えています。

結論

グレート・ゲームは、中央アジアにおける英露両国の対立を象徴する歴史的な現象であり、その影響は今なお続いています。地政学的な利害関係が複雑に絡み合う中、歴史的な背景を知ることは、現代の国際政治を理解する上で欠かせない要素となっています。

もう一度検索