ワハーン回廊

ワハーン回廊

ワハーン回廊は、アフガニスタン北東部のバダフシャーン州に位置する、東西に細長く伸びた回廊状の地域です。この地域は、ワハーン渓谷とも呼ばれ、パミール[[高原]]を東西に貫いています。地理的には、北をタジキスタン、東を中国、南をパキスタンに囲まれた、非常に特徴的な地形をしています。

歴史

ワハーン回廊は、かつて東西を結ぶシルクロードの一部として、重要な役割を果たしていました。特に「オアシスの道」として、交易の中継地として栄えました。

19世紀には、この地域はグレート・ゲームと呼ばれる、イギリスとロシアの勢力争いの舞台となりました。1890年には、イギリスの軍人フランシス・ヤングハズバンドが、ロシア軍兵士に拘束されそうになる事件が発生しました。この事件がきっかけとなり、1891年にイギリス領インド帝国は、フンザ藩王国とナガル藩王国との間でフンザ・ナガル戦争を開始しました。

この戦争の結果、ワハーン回廊は親イギリスのアフガニスタンに組み込まれ、イギリスとロシアの両勢力間の緩衝地帯となりました。しかし、その後の歴史の中で、この地域は中央の支配や軍事的な関心が及ばない地域となっています。1970年代のソ連によるアフガニスタン侵攻や、その後の内戦状態とも無縁のまま、ワハン人やキルギス人などの住民が、静かに生活を営んでいます。

近年では、2018年に中国がこの地域に軍事基地を建設しているという報道がありましたが、中国政府はこれを否定しています。また、2019年には、ワシントン・ポストが、ワハーン回廊に繋がるタジキスタンとアフガニスタンの国境にある中国軍の駐留施設を報じましたが、タジキスタン政府もこれを否定しています。

地理

ワハーン回廊は、東西約200km、南北約15kmの狭隘な高原地帯です。周囲を険しい山々に囲まれており、外部からのアクセスが非常に困難な地域です。特に、ヒンドゥークシュ山脈を越える国境には、ブロゴル峠やワフジール峠などの高地峠が点在しています。

ワフジール峠は、世界でも最も標高の高い国境の一つで、中国との間に大きな時差があります。この峠は長らく閉鎖されており、車両が通行できるような道路は整備されていません。かつてNATO軍がこの地域に安全な輸送路を確保するため、中国に国境の開放を求めたことがありましたが、実現には至っていません。

住民

ワハーン回廊には、人口が非常に少ないです。主にワハン人が居住しており、キルギス人の遊牧民が少数生活しています。

稀少動物

この地域では、ユキヒョウの生息が確認されています。

ワハーン回廊は、その歴史、地理、文化において、非常にユニークな地域です。厳しい環境の中で生活する人々や、そこに生息する希少動物など、多くの魅力を持っています。

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