アフリカ分割

アフリカ分割：帝国主義列強による大陸の植民地化

アフリカ分割とは、1880年代から第一次世界大戦勃発までの期間に、ヨーロッパの帝国主義列強がアフリカ大陸のほぼ全土を植民地化した出来事です。この過程は、単なる領土拡張競争ではなく、ヨーロッパ列強の思惑、アフリカ側の抵抗、そしてその後のアフリカに深い爪痕を残しました。

背景：産業革命と帝国主義の隆盛

19世紀以前、ヨーロッパ勢力のアフリカへの関与は沿岸部の港湾に限定されていました。主な目的は奴隷や物産の獲得であり、内陸部の支配にはコストが見合わなかったためです。しかし、産業革命が進展すると状況は一変します。ヨーロッパは、工業原料の供給地、工業製品の市場としてアフリカの価値を再認識し、本格的な植民地支配へと舵を切りました。

文明化という大義名分

奴隷貿易廃止の流れの中、ヨーロッパ人はアフリカの人々への人道的な配慮を示す一方で、彼らを人種的・文明的に劣等とみなす考えを強めました。彼らは、ヨーロッパ式の宗教、政治制度、文化をアフリカに「与える」ことが、未開な人々を文明化する行為だと信じ、植民地獲得を正当化しました。

分割の過程：列強の思惑と衝突

18世紀末から、ヨーロッパは探検隊を派遣し、「暗黒大陸」と呼ばれたアフリカの実像を明らかにしようとしました。探検家たちは奥地の首長との政治関係を樹立し、キリスト教の布教を行いました。イギリスとフランスは、エジプトの支配権を巡って対立し、イギリスはエジプトを保護国化し、南アフリカへと植民地を拡大するアフリカ縦断政策を推進しました。一方、フランスはアルジェリア、チュニジアを保護国化し、アフリカ横断政策を展開しました。この2つの政策が交錯し、1898年にはファショダ事件が勃発しましたが、フランスが譲歩したことで大きな衝突は避けられました。

19世紀後半に入ると、ドイツ、イタリア、ベルギーなどの新興国もアフリカ進出を試み、列強間の対立は激化しました。ベルギー国王レオポルド2世は、コンゴ川流域を私的な領地として領有しようとし、大きな問題となりました。1884年のベルリン会議では、コンゴ川とニジェール川の航行の自由が定められ、コンゴ自由国が成立しました。また、沿岸部を領有した国は、その後背地の領有を国際的に認められるという原則が合意されました。

アフリカの抵抗と列強の支配

ヨーロッパ列強の支配に対し、アフリカ各地で抵抗運動が起こりました。スーダンのマフディー運動、西アフリカのトゥクロール帝国やサモリ帝国のジハード政権、タンザニアのマジ・マジ反乱などがその例ですが、いずれもヨーロッパ列強の圧倒的な軍事力の前に鎮圧されました。ヨーロッパ到来以前から存在した土着の王国も次々と武力で制圧され、植民地に内包されていきました。エチオピア帝国はイタリア軍を撃退し独立を保ちましたが、リベリアはアメリカ合衆国の強い影響下にあり、実質的に植民地支配と変わらない状況でした。

分割の完了とその後

ビスマルク退任後、ドイツは植民地獲得に積極的になり、英仏と対立しました。1905年と1911年にはモロッコ事件が起こり、ヨーロッパの緊張が高まりました。1912年、イタリアがリビアを獲得したことで、リベリアとエチオピアを除くアフリカ全土がヨーロッパ列強によって分割し尽くされました。

アフリカ分割は、アフリカ大陸の政治、経済、社会構造に大きな影響を与えました。国境線は民族や文化を無視して引かれ、紛争の種となりました。また、資源の収奪や強制労働は、アフリカ経済の発展を阻害しました。アフリカ分割は、20世紀後半の独立後も、アフリカの国々に深い影を落とし続けています。

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