アブドゥッラー1世

アブドゥッラー1世・ビン・アル＝フサイン

アブドゥッラー1世・ビン・アル＝フサインは、1882年2月にメッカで生まれ、1951年7月20日に亡くなったヨルダンの初代国王です。彼の治世は1921年から1951年まで続き、ヨルダンの国家形成において重要な役割を果たしました。彼の肖像は、ヨルダンで流通する5ディナール紙幣に描かれています。

生い立ちと初期の活動

アブドゥッラーは、メッカの大首長であるフサイン・イブン・アリーの次男として誕生しました。彼の家族はアラブ民族運動に深く関与しており、アブドゥッラーも1916年に始まったアラブ反乱に参加しました。1920年にはダマスカスでのアラブ民族会議に出席し、同じく王族である弟のファイサルが初代シリア国王に選ばれるなど、政治的な活動を初めました。

同年、ダマスカス占領後、ファイサルにシリア王国を支援するために軍を率いて北上するも、イギリスの提案でトランスヨルダン王国の即位を受け入れました。これにより、彼はトランスヨルダンの国王となり、後にこの地域がヨルダンと呼ばれることになります。

政治的な影響力と外交活動

アブドゥッラーの治世下、ヨルダンは1927年に立憲君主国となり、イギリスの保護下に入りましたが、1946年には正式に独立を果たしました。1947年、アブドゥッラーは国際連合のパレスチナ分割決議を支持した唯一のアラブ指導者となりました。当時、彼はアラブ国家の指導者としての立場を強化しようと努力し、第一次中東戦争ではアラブ連盟の全戦線を指揮しました。

しかし、アブドゥッラーは野心的な側面も持ち、サウジアラビアに奪われたメッカの代理として東エルサレムを掌握し、新しいアラブの盟主になろうとしました。このため、彼は他国からの警戒の目にさらされ、権限が制約される事態となりました。また、彼は秘密裏にイスラエルとの外交交渉を進め、パレスチナ問題について複雑な立場に立つこととなりました。

暗殺とその後

1948年のエリコ会議でアブドゥッラーは「パレスチナの王」を自称しましたが、他のアラブ諸国からの強い反発を招きました。彼とイスラエルとの接触が明らかになると、パレスチナの指導者たちとの間で緊張が高まり、旅行中のエルサレムで1951年7月20日に暗殺されました。その後、彼の遺体はアル＝アクサー・モスクに埋葬されました。

家族構成

アブドゥッラーの父はメッカの大首長であるフサイン・イブン・アリー、兄はヒジャーズ王国の最後の国王アリー・イブン・フサイン、弟はシリアの初代国王ファイサル1世として知られています。彼には弟のザイド・イブン・フサインと子供たちも多く、王家の血を引く重要な人物たちと連携していました。

アブドゥッラー1世の治世は、単なる王国の樹立にとどまらず、広範なアラブ民族運動における彼の役割を考えるうえで欠かせない重要な時代となりました。

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