アル＝アクサー・モスク

アル＝アクサー・モスク：エルサレムの聖地

エルサレム旧市街の聖域「ハラム・シャリーフ」南側に位置するアル＝アクサー・モスクは、イスラム教において重要な聖地です。別名「銀のドーム」とも呼ばれ、その歴史と文化的意義は計り知れません。

建立と歴史

「遠隔のモスク」を意味するアル＝アクサー・モスクは、ウマイヤ朝のワリード1世によって705年から709年の間に建設されました。預言者ムハンマドが天馬ブラークに乗って昇天したというミウラージュの奇跡を記念して建てられたと伝えられています。

しかし、13世紀と15世紀に火災に見舞われたため、幾度となく再建・改築が行われました。そのため、創建当時の姿はミフラーブ手前のドームの壁面を除き、ほとんど残されていません。岩のドームや預言者のモスクとは異なり、長い歴史の中で幾重にも重ねられた改修の歴史が、現在のモスクの姿を形作っていると言えるでしょう。

イスラム教における重要性

アル＝アクサー・モスクは、マッカの預言者のモスクやダマスクスのウマイヤド・モスクと並んで、イスラム教初期に建設された重要なモスクの一つです。当初は、現在のカアバ以前のイスラム教の最高聖地であり、最初のキブラ（礼拝の方向）はこのモスクの方角に定められていました。モスクのキブラの壁面は、ハラム・シャリーフの南側の境壁と一致しています。

モスクのすぐ近く、約130メートル北には、ハラム・シャリーフの中央に岩のドームがあります。これらの聖域が近接していることは、この場所の聖性の高さを示しています。

管理と現状

現在、アル＝アクサー・モスクはイスラエルの実効支配下にありますが、管理はヨルダン宗教省がワクフ（イスラム教の宗教法人）として行っています。ヨルダンは、1924年、1964年、1994年とモスクの修復作業に携わっており、その歴史的建造物を維持するために尽力しています。

しかし、1969年には、オーストラリア人のキリスト教福音派信者デニス・マイケル・ロハンによる放火事件が発生しました。この事件は、イスラーム諸国に大きな衝撃を与え、イスラム諸国会議機構設立のきっかけの一つとなりました。この事件は、アル＝アクサー・モスクの聖なる場所としての重要性と、その保護の必要性を改めて世界に認識させることとなりました。

まとめ

アル＝アクサー・モスクは、単なる歴史的建造物ではなく、イスラム教徒にとって聖なる場所であり、その歴史と文化的意義は深く、そして複雑です。イスラエルとパレスチナ、そして世界中のイスラム教徒にとって、このモスクは今もなお、重要な役割を担い続けています。その歴史、建築、そして政治的・宗教的側面を理解することは、近東の歴史と文化を理解する上で欠かせません。

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