アブドゥル・ガニ・バラダル

ムッラー・アブドゥル・ガニ・バラダルとは

ムッラー・アブドゥル・ガニ・バラダル（1968年生まれ）は、アフガニスタンのターリバーン（タリバン）の共同創設者であり、現在は同組織の副首相を務めています。彼はムッラー・バラダル・アフンドやムッラー・ブラザーとも呼ばれ、ターリバーン内での重要な役割を担っています。初代最高指導者ムハンマド・オマルの副官として活躍し、その後のタリバン再興にも深く関与しました。

生い立ちと初期の活動

バラダルは、アフガニスタンのウルーズガーン州で生まれ、パシュトゥーン人のドゥッラーニー部族に属します。1980年代のソ連・アフガン戦争では、アフガン・ムジャヒディーンとしてソ連軍と戦いました。その後、カンダハールでムハンマド・オマルと共にイスラム神学校を運営。この頃、オマルとバラダルは義兄弟になった可能性が指摘されています。

1994年、バラダルはオマルと共にターリバーンを創設。ターリバーン政権下では、ヘラート州やニームルーズ州の知事、軍団司令官などを歴任し、重要な地位を占めました。アメリカ国務省の資料によれば、彼は陸軍参謀副長や中央陸軍軍団の司令官を務めたとされています。

アフガニスタン紛争（2001年-2021年）

2001年のアメリカ同時多発テロ後、アメリカがアフガニスタンに侵攻し、ターリバーン政権は崩壊しました。バラダルはアメリカ軍と戦い、一時的に逃亡しました。その後、ターリバーンの指導者評議会を率い、パキスタンから反乱を指揮しました。彼は軍事活動だけでなく、和平交渉にも積極的に関与し、交渉相手として重要な役割を果たしました。

逮捕と釈放

2010年2月、バラダルはパキスタンで逮捕されました。この逮捕は、ターリバーンとの戦闘における転換点と見なされましたが、パキスタンがタリバンとの交渉を妨害するためだったという見方もあります。また、当時のパキスタン軍幹部の個人的な権力拡大のためだったとする意見もあります。アフガニスタン政府はバラダルとの秘密交渉を行っていたため、この逮捕に激怒したとも伝えられています。

2018年10月、バラダルはアメリカの要請により釈放され、カタールのドーハにあるターリバーン外交事務所の責任者に就任しました。2020年2月には、ターリバーンを代表して米軍撤退に関するドーハ合意に署名し、トランプ大統領との電話会談も行いました。

ターリバーン復権と現在

2021年5月、アメリカ軍がアフガニスタンからの撤退を開始すると、ターリバーンは勢力を盛り返し、8月にはカーブルを制圧しました。バラダルは帰国し、タリバンの副首相に就任しました。また、CIA長官との会談も行い、アメリカとの窓口役も務めています。

対中関係

2021年7月、バラダルは中国を訪問し、外相の王毅と会談しました。この会談で、バラダルは中国をアフガニスタンの信頼できる友人だと述べ、今後の両国関係の深化が期待されています。

結論

ムッラー・アブドゥル・ガニ・バラダルは、ターリバーンの創設から現在に至るまで、その中心的な役割を担ってきた人物です。激動の時代を生き抜き、複雑な政治情勢の中で重要な決定に関わってきた彼の生涯は、アフガニスタンの歴史を理解する上で欠かせない要素となっています。今後、彼がアフガニスタンにどのような影響を与えるのか、その動向が注目されます。

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