アブラソコムツ

アブラソコムツ（油底鯥・脂底鯥、学名: Lepidocybium flavobrunneum）は、スズキ目クロタチカマス科に属する深海魚です。各国の温熱帯海域に広く分布しており、水深150mから1000m付近の深海に生息しています。

名称

アブラソコムツは、地域によって様々な呼び名で呼ばれています。静岡県では「サットウ」と呼ばれ、大東諸島では同じクロタチカマス科のバラムツと区別せずに「インガンダルマ」または「ダルマ」という名で呼ばれています。英語では「Escolar（エスカラー）」という名称が一般的です。

特徴

アブラソコムツは体長100cmを超える大型魚で、150cm近くまで成長することもあります。体色は黒茶色で、目が大きく白いのが特徴です。口には鋭い歯が生えており、ムツに似た厳つい顔つきをしていますが、食用魚のムツとは同じスズキ目の深海魚という以外に直接的な関係はありません。釣りにおいては、その強い引きからスポーツフィッシングの対象となることもあります。

利用

アブラソコムツは、マグロ、特に大トロに似た味がすると評され、美味とされています。しかし、その油脂成分がワックスエステルであるため、人間にとっては有害です。ワックスエステルは、深海魚に多く見られる特徴で、ヒトはこれを消化することができません。そのため、多量に摂取すると、下剤のような作用で腹痛や下痢を引き起こします。さらに、便意を伴わずに油が肛門から漏れ出す、あるいは皮脂漏症を引き起こす可能性も指摘されています。重度の下痢は脱水症状や昏睡につながる危険性もあります。

日本では、アブラソコムツはバラムツと共に食品衛生法で販売が禁止されています。判例でもこの措置は支持されており、市場に流通することはありません。しかし、釣りの対象となるため、釣獲や混獲によって入手することが可能であり、一部では食用にされています。

海外では、アブラソコムツの販売が禁止されていない国もありますが、その摂取量には注意が必要です。例えば、ある海外のサイトでは、アブラソコムツの切り身は6オンス（約170g）以上の摂取を避けるよう強く推奨しています。

また、アメリカでは、アブラソコムツが「white tuna」として偽装販売されているケースが報告されています。ある調査によれば、寿司店で提供される「white tuna」の84%がアブラソコムツであったとされ、注意喚起がなされています。

一方、台湾ではアブラソコムツは「油魚（ヨウユー）」と呼ばれ、その魚卵を加工した「油魚子（ヨウユーズー）」という食品が、屏東県東港鎮の名産品として販売されています。

参考文献

社団法人日本水産物貿易協会編 『商用魚介名ハンドブック』（改訂第3版）成山堂書店、2005年。ISBN 978-4-425-82783-1。

関連項目

魚の一覧
エスカラー (潜水艦) - アメリカ海軍の潜水艦。
探偵!ナイトスクープ - 長原成樹探偵がアブラソコムツをテーマにしたリポートを行った。

外部リンク

アブラソコムツ - 三陸魚図鑑
厚生労働省 | 自然毒のリスクプロファイル | 魚類：異常脂質｜概要版・詳細版 - アブラソコムツほか異常脂質魚類について、形態的特徴・分布・有毒部位・毒性を説明する。
* 有毒魚 - 東京都福祉保健局 東京都市場衛生検査所

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