アブラハヤ

アブラハヤ（油鮠）とは

アブラハヤ（Rhynchocypris lagowskii steindachneri）は、コイ目コイ科ウグイ亜科に分類される淡水魚です。その名の通り、体表のぬめりが非常に強いことが特徴で、これが「アブラ」の由来となっています。

様々な呼び名

アブラハヤは、地域によって様々な呼び名で親しまれています。「ハヤ」という呼び名は、本種に限らず、他の淡水魚にも用いられることがあります。その他、「ミノー」、「ヤマガオ」、「ムギクソ」、「ドロクソ」、「クソッパヨ」、「アッパヘ」など、地域特有の愛称が存在します。

分布

アブラハヤは、日本固有の亜種であり、かつては本州に広く分布していました。具体的には、日本海側では青森県から福井県にかけて、太平洋側では青森県から岡山県にかけて生息していました。しかし、近年では北海道でも生息が確認されており、これは人為的な放流によるものと考えられています。

形態

アブラハヤは、成魚でも全長15cm程度と小型の魚ですが、最大で20cmほどになる個体もいます。体型は細長く、体表はぬめりで覆われています。体色は黄褐色で、腹部は白色です。体側には、黒色と金色の縦帯が走り、その周辺には細かな黒斑が散らばっています。雄と雌では、生殖器の形状に違いが見られ、雄はより鋭く、雌は丸みを帯びています。繁殖期には、雌の吻が伸びるという特徴があります。

同属のタカハヤと比較すると、鱗が小さく、黒色縦帯がより明瞭である点が異なります。また、アブラハヤの方が尾柄が細長く、尾鰭が深く切れ込んでいるのも特徴です。

生態

アブラハヤは、山地の湖沼や河川の中上流域に生息し、淵や淀みを好みます。冷水を好み、雑食性で、水底の生物や、水中に流れ込む有機物、付着藻類などを食べます。産卵期は4月から7月で、砂礫底に集団で産卵します。孵化した幼魚は浅瀬で群れて生活し、成長すると共に淵や淀みへと移動します。

人為的な影響

1970年代後半から、北海道でのアブラハヤの生息が報告されるようになりました。これは、琵琶湖産コアユの稚魚放流にアブラハヤが混入し、北海道に持ち込まれたと考えられています。2000年代には、道南の河川で定着が確認されました。

また、本来生息していなかった水系で、タカハヤやその交雑個体が発見される事例も報告されています。これらは、人為的な放流による影響と考えられます。アブラハヤとタカハヤの交雑は、一代雑種なのか、戻し交配を経た個体なのかは不明です。さらに、エゾウグイとの間で属間雑種が存在することも確認されています。

人との関わり

アブラハヤは、釣りの対象魚として、一本釣りやサビキ釣りで楽しまれています。餌には、サシや赤虫がよく使われます。小川にも生息するため、子供でも比較的簡単に釣ることができます。また、泳がせ釣りの餌として利用されることもあります。近年では、小型のルアーで釣ることも可能です。

食用としての利用

アブラハヤは、食用としても利用されています。成魚は骨が硬いため、小型のものが好まれます。内臓を取り除き、天ぷら、フライ、から揚げ、マリネ、南蛮漬けなど、様々な料理で楽しめます。小骨ごと食べられるため、カルシウムを効率的に摂取することができます。

参考文献

板井隆彦(アブラハヤ部分)『山渓カラー名鑑 日本の淡水魚』山と渓谷社、1989年。ISBN 4-635-09021-3。
藤田朝彦(アブラハヤ部分)『小学館の図鑑Z 日本魚類館』小学館、2018年。ISBN 978-4-09-208311-0。
細谷和海『山渓ハンディ図鑑15 増補改訂 日本の淡水魚』山と渓谷社、2019年。ISBN 978-4-635-07043-0。

関連項目

魚の一覧
* ヤマナカハヤ：アブラハヤの別亜種または地域個体群

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