アブラヨタカ

アブラヨタカ：夜空を舞う油の鳥

アブラヨタカ（学名：Steatornis caripensis）は、南米の熱帯雨林に生息するユニークな鳥類です。その名前の由来は、かつて原住民が雛から油を採取していたことにあります。夜行性で、主にヤシ科などの果実を食べるという、他の夜行性鳥類とは異なる生態も特徴です。

形態：独特の風貌

アブラヨタカは全長約40～49cm、翼開長約92cmの中型の鳥です。翼は比較的長く先が尖っており、鉤状に曲がった嘴と、その付け根に生える長い髭状の羽毛が特徴的です。体色は茶色を基調とし、白い斑点が全身に散らばっています。尾と翼には暗色の帯状の模様が見られます。脚は短く、鋭い爪を持っています。

生態：果実食の夜行性鳥

アブラヨタカは、山岳地帯の洞窟や鍾乳洞、海岸の海食洞などに生息します。夜行性のため、日中は洞窟内で休む一方、日没後になると活動を開始します。夜行性の鳥類としては珍しく、果実食です。主にヤシ科、クスノキ科、カンラン科などの植物の果実、特に脂質に富んだ果実を好みます。鋭い嘴で果実をちぎって丸呑みにし、後でゆっくりと消化します。未消化の種子は、巣の周辺に吐き出します。

繁殖は洞窟内で行われます。岩棚の上に、半消化の植物繊維や食べかすなどを積み重ねて巣を作ります。同じ巣を毎年修復して使い続ける習性があります。繁殖期は通常1～5月で、年に1回繁殖しますが、地域によっては年に2回繁殖するケースもあります。1回に2～4個の卵を産み、雌雄共同で約34日間抱卵します。雛は約120日で巣立ちします。

分布：南米の熱帯地域

アブラヨタカは、南アメリカ北部（ペルー、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナ）とトリニダード・トバゴに分布しています。迷鳥としてパナマやコスタリカでも観察された記録があります。

人間との関わり：油の採取と保全

アブラヨタカの雛は成鳥よりも体が大きく、脂肪が豊富です。そのため、かつては原住民が雛を捕獲し、油を採取していました。この油は、照明や料理に使用されていたと言われています。このことが、英名「Oilbird（油の鳥）」の由来となっています。現在では多くの生息地で保護されており、雛の油採取はほとんど行われていません。しかし、生息地の森林破壊は大きな脅威であり、アブラヨタカの保全が課題となっています。

まとめ：神秘的な夜行性鳥類

アブラヨタカは、その独特の生態と、人間との歴史的な関わりによって、他の鳥類とは一線を画す存在です。夜行性でありながら果実食という特殊な食性、洞窟内での集団繁殖、そしてかつては油の供給源として利用されていた歴史など、魅力的な特徴を数多く持ち合わせています。今後の研究と保全活動によって、この希少な鳥類の未来が守られることを願っています。

もう一度検索