アブロ 730

アブロ 730（Avro 730）

アブロ730は、イギリス空軍（RAF）が計画したマッハ3を想定した偵察機および爆撃機です。この機体は実用化されれば、戦略核攻撃部隊の一翼を担い、イギリスの核抑止力の重要な一環となることが期待されていました。しかしながら、この計画は1957年に発表された防衛白書に基づき中止されました。

開発背景

冷戦の初期、RAFに配備された3Vボマーはイギリスにおける核抑止の役割を果たすことが求められていました。このため、爆撃とそれを支えるための超音速戦略偵察機が必要であるとの認識が高まっていました。1954年、運用要求330が策定され、ソ連の防衛網を突破できる航空機の開発が求められました。要件には、高度60,000フィートにおいてマッハ2.5の巡航能力、最高速度マッハ3を達成すること、さらに航続距離が5,754マイル（約9,260km）であることが含まれていました。当時、この計画は国際的に見ても非常に先進的な航空機開発とされていました。

アブロ730の開発を支えるために、3社の航空機メーカーが提案を行いました。それは、ハンドレページのHP.100、ヴィッカースのSP4、そしてアブロの730です。これらの機体は、未来的なデルタ翼のデザインや細長い機体形状を持つものでした。アブロの案は1955年半ばに選定され、開発が始まりました。

プロトタイプと中止

開発の一環として、アブロ731という名の3/8スケール試験機が製造され、その飛行は1959年に予定されていました。しかしながら、国防大臣であるダンカン・サンディスは、この計画の中止を発表しました。これは、アブロ730が実用化される頃には、ソ連の対空ミサイルが進化し、十分に防御できなくなるという見解からでした。それでも、ブリストル188の開発は続行され、最終的にはその研究成果がコンコルドの開発に寄与することになりました。

設計特徴

偵察機型

アブロ730はカナード型の翼配置を採用し、低速時のトリム抗力を減少させると同時に揚力を増加させる設計がなされています。細長い胴体は高いファインネスレシオを持ち、 wingspan（翼幅）は18.2メートルでした。エンジンはアームストロング・シドレーP.156を4基搭載する構造で、最初の案は純粋に偵察機としての仕様を重視し、レーダーによって攻撃目標を特定する役割を担っていました。

偵察爆撃機型

開発が進む中で、レーダー装置の小型化が進み、これにより機内にかなりのスペースが確保されました。RAFは偵察任務のみならず、爆撃任務も担うように要求し、その空きスペースを利用して長い爆弾倉を設ける必要が出てきました。これにより、初期の設計から大幅な修正が必要になり、新たな運用要求RB.156が策定されました。

新しい案では、機体が大型化し翼型も変更され、翼面積を増加させるためにウィングレットが取り付けられました。エンジンは合計で8基を備え、爆弾倉は50フィート（約15メートル）という長大なサイズに改良されることになりました。この新しい型の爆撃機には、新型核弾頭「Blue Rosette」が搭載される計画がなされました。

性能と仕様

諸元（偵察爆撃機型）

• - 乗員: 2名
• - 全長: 49.8メートル
• - 翼幅: 18.2メートル
• - 翼面積: 185.8平方メートル
• - 動力: アームストロング・シドレーP.176ターボジェットエンジン (43.2 kN) × 8基

- 最大速度: マッハ3 (約3,850 km/h)

• - 航続距離: 9,260 km
• - 武装: ブルーロゼット核ミサイル1-2発

アブロ730は、イギリスの航空機設計における挑戦的な試みの一つであり、冷戦期の防衛戦略に大きな影響を与えたプロジェクトでした。その結果、多くの技術的な知見が生まれ、次世代機への布石を築いたことは評価に値します。

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