アポロ5号

アポロ5号：月着陸船の無人飛行試験

アポロ5号は、アメリカのアポロ計画において、初めて月着陸船（LM）の無人飛行試験を行ったミッションです。この試験の主な目的は、宇宙空間における月着陸船の性能を検証することでした。特に、上昇段と下降段のエンジン、そして分離システムの動作確認が重要な焦点でした。

試験の目的

アポロ5号のミッションで最も重要な要素の一つは、下降段エンジンが宇宙空間で推力を調整できる初のロケットであったことです。また、月面降下中に緊急脱出が必要になった場合の対応を想定し、下降段を接続した状態で上昇段のロケットに点火する「接続点火」試験も実施されました。この試験は、ミッションのエンブレムにも描かれており、その重要性を示しています。

計画の遅延

アポロ5号の計画は、アポロ4号と同様に大幅な遅延を経験しました。その主な原因は、月着陸船の開発における技術的な困難でした。特に、人間を乗せて月面に安全に着陸させるための宇宙船の開発は、前例がなく非常に複雑な課題でした。当初、1967年4月に打ち上げが予定されていましたが、下降段エンジンの噴射不調や上昇段エンジンの溶接部分の不具合など、様々な問題が発生しました。最終的に、月着陸船がロケットに設置されたのは同年11月19日でした。

さらに、打ち上げ直前の12月17日には、グラマン社の工場で月着陸船の圧力試験中に事故が発生しました。設計上は39kPaまで耐えられるはずの窓ガラスが、35kPaの圧力で破損してしまいました。この事故を受け、アポロ5号で使用される無人飛行の月着陸船では、窓ガラスがアルミニウム板に交換されました。

飛行

アポロ5号の打ち上げには、サターンV型ロケットよりも小型のサターンIB型ロケットが使用されました。このロケットは、アポロ宇宙船を月まで送ることはできませんが、地球周回軌道に乗せるには十分な能力がありました。この機体は、元々アポロ1号で使用される予定でしたが、同機での地上訓練中に発生した火災事故で飛行士3名が犠牲になったため、アポロ5号に転用されました。

今回は無人飛行であるため、月着陸船は着陸脚を装備しておらず、緊急離脱用牽引ロケットも搭載されていませんでした。そのため、ペイロードを含めたロケット全体の高さは55mと、通常のサターンIB打ち上げ時よりも低くなりました。

1968年1月22日、アポロ5号は予定より8ヶ月遅れて打ち上げられました。飛行はほぼ完璧で、第二段ロケットと月着陸船は、近地点162km、遠地点214kmの楕円軌道に投入されました。打ち上げから45分後、月着陸船を分離し下降段ロケットを噴射しましたが、ソフトウェアのバグにより予定よりも早く噴射が停止してしまいました。しかし、重要な「接続点火」試験は予定通りに実施されました。

月着陸船は地球を7.5周した後、グアム島の南西数百キロの太平洋上で消息を絶ちました。このミッションは、アポロ計画における月着陸船の重要なテストケースとなり、その後の月面着陸の成功に不可欠なデータを提供しました。

外部リンク

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