アミューモーネー

ギリシア神話に伝わる女性、アミューモーネー（古希ではἈμυμώνη、Amȳmōnēと記され、アミュモネと縮めて呼ばれることもあります）。彼女はアルゴスを治めた王ダナオスの五十人の娘、いわゆるダナイデスのひとりです。偉大な海の主ポセイドーンとの間に子をもうけ、ナウプリアという都市を築いたとされるナウプリオスをこの世に送りました。

古い神話によれば、天空の女王ヘーラーとポセイドーンが、アルゴス地方の支配権を巡って激しい争いを繰り広げた時期がありました。この論争の仲裁役を務めた河の神イーナコスは、ヘーラーに有利な裁定を下しました。これに憤慨したポセイドーンは、仕返しとしてアルゴリス一帯に苛烈な旱魃をもたらし、大地を干上がらせたといいます。

このため、水源を絶たれた人々を救うべく、アミューモーネーの父である王ダナオスは、彼の娘たちに命じて新たな水の源を探し求めさせました。アミューモーネーも他の姉妹と共に渇きに苦しむ地を歩き回っていました。ある時、彼女は一頭の鹿を見つけ、狩りをしようと槍を投げましたが、狙いは逸れ、近くで眠っていたサテュロスに命中してしまいました。

突然の衝撃で目を覚ましたサテュロスは、アミューモーネーの姿を目にすると、情欲を燃え上がらせて彼女に襲いかかろうとしました。彼女が必死に助けを求めて叫び声を上げると、その声に応えるように、まさしく海の神ポセイドーンが姿を現しました。彼はその手に持つ強力な三叉戟を投げつけ、サテュロスを遠くへ追い払いました。

危機を救われたアミューモーネーは、救世主であるポセイドーンに心からの感謝を捧げました。そして、二神は一夜を共に過ごし、この結びつきから後のナウプリアの建設者として知られる息子ナウプリオスが誕生することになります。

ポセイドーンはさらに、アミューモーネーのためにアルゴス地方を苦しめる旱魃を終わらせる手助けをしました。その具体的な方法は、古代の記述によっていくつかの異説が伝えられています。たとえば、神話の編纂者アポロドーロスは、ポセイドーンが単にレルネーの泉の湧き出る場所をアミューモーネーに教えたと記しています。一方、ローマの著述家ヒュギーヌスによれば、ポセイドーンはサテュロスを撃退したその地を自らの三叉戟で強く突くと、たちまちそこから豊かに水が湧き出したとしています。この新たな水源は、レルネーの泉、あるいはアミューモーネーの名を冠してアミューモーネーの川とも称されました。

さらに別の伝承では、ポセイドーンがアミューモーネーを助ける際に投げた三叉戟が岩に深く突き刺さったとされます。ポセイドーンは彼女と共に過ごした一夜の証として、その岩に刺さった三叉戟を引き抜くようアミューモーネーに求めました。彼女がその通りに実行すると、岩の裂け目から清らかな水が勢いよく噴き出したといいます。この泉も当初はアミューモーネー泉と呼ばれましたが、やがて一般にはレルネーの泉として知られるようになりました。

このレルネーの泉は、後にギリシア最大の英雄ヘーラクレースが、多頭の怪物ヒュドラーを退治するという有名な功業の舞台となります。古代の地理学者パウサニアスは、アミューモーネー川、すなわちレルネーの泉の水源のすぐそばに一本のプラタナスの木が立っており、ヒュドラーはこの木陰で成長したと記しています。

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