アムステルダム銀行

アムステルダム銀行の歴史とその影響

アムステルダム銀行（アムステルダムぎんこう）は、オランダのアムステルダムで設立された公立の振替銀行です。この銀行は、ヴェネツィアのリアルト銀行を模範としており、さまざまな貨幣を預金として受け入れ、法定換金率に基づいて銀行通貨であるグルデン（ギルダー）での払い戻しを行っていました。特に、フォンテーヌブローの勅令やジョン・ローの経済政策の破綻により、ユグノー資本が大きく流入し、その影響で預金が急増しました。

設立の背景

16世紀のアントワープでは、公的に預金や振替業務が禁止されていたため、公立の振替銀行は存在しませんでした。このため、民間の金融業者がその役割を果たしていました。アムステルダムも、同様に民間の金融業者に依存しており、振替業務を行うカシールが不正行為を行い、商人たちに損害を与えていたのです。1605年5月10日には市議会が商人たちの銀行設立の要求を議題に取り上げ、その後の17世紀初頭には、商人たちとのトラブルが増加していきました。

このため、商取引の円滑化を求める声が高まり、1609年1月にアムステルダム銀行が設立されました。この新しい銀行は、民間の振替業務を禁止し、商人たちに対して安定した金融サービスを提供しました。設立時には731人の出資者があり、その中には25人のユダヤ人が含まれていました。

当初、600グルデン以上の為替手形はアムステルダム銀行での決済が義務づけられていましたが、1643年にはその額面が300グルデンに引き下げられました。預金は市の保証によって保護され、差し押さえができない仕組みが整えられました。さらに、当座貸越の制限が設けられ、経済の安定を図りました。しかし、預金や口座に関する情報は公開されていないままでした。

経済の影響と流通貨幣の変遷

グレシャムの法則が適用される中、銀行が公認する貨幣は市場から消え、流通貨幣の価値は下がっていきました。これに対抗する形で当局は鋳貨令を改定し、銀行貨幣の価値を流通貨幣に合わせる試みを行いましたが、1638年には公式にその試みを断念しました。悪貨の流入は特に南ネーデルラントから多く、この問題を解決するために政府は1659年に独自に貨幣を鋳造することを決定します。

1683年には市の法令により、アムステルダム銀行は抵当貸付を実施することが認められました。商人たちは金銀を預けその証書を受け取り、この預り証は現金の引き出しをしばらく保証するものでした。さらにこの時期から銀行貨幣は帳簿決済での取引に移行し、これは中世には見られなかった新しい現象でした。

経営の変遷と信用危機

1732年以降、アムステルダム銀行は東インド会社への貸付による累積赤字を抱え、経営危機が迫ります。1763年には信用危機が発生し、1780年からの第四次英蘭戦争で経営状況は一層厳しくなりました。1795年にフランスがオランダを占領すると、預金者は次々と逃げ出し、1819年にはついに倒産しました。占領された際、銀行の資産は全て東インド会社に貸し出されていることが発覚しました。

クロムウェルの影響

オリバー・クロムウェルの政権以降、アムステルダム銀行の取引に変化が生じました。クロムウェル以前は委託貿易が主流でしたが、海上封鎖によりその流れが断たれ、取引の方法が変わりました。当時のスコットランド資本であるホープ商会が新たなプレイヤーとして浮上し、銀行のヘビーユーザーとなりました。

このように、アムステルダム銀行はオランダの金融史において重要な位置を占め、その役割は時代によって変化してきました。各種の歴史的要因が絡み合いながら、その存在は経済の動向に多大な影響を与えてきたのです。

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