為替手形

為替手形とは

為替手形は、手形の振出人（発行者）が、第三者（支払人）に対して、受取人またはその指図人への一定金額の支払いを委託する有価証券です。略称として「為手（ためて）」とも呼ばれます。

約束手形を含む手形全般については、「手形」の項目を参照してください。ここでは、為替手形特有の内容に焦点を当てて解説します。

為替手形の特徴

為替手形は、主に遠隔地との取引、特に輸出入などの国際取引において、現金を直接送るリスクを避ける目的で利用されます。

日本の商慣習では、江戸時代の遠距離取引において為替の手段として利用されていましたが、現代の国内取引では決済手段としてはほとんど用いられません。主に、債権者が債務者に引き受けさせ、期日に支払いをさせる融資の手段として利用されています。

印紙税について

印紙税の納付義務は、「手形を完成させた」者に課せられます。この点を悪用し、支払人欄に署名し、振出人欄を空欄にした為替手形を約束手形の代わりに受取人に交付するケースがあります。この場合、受取人は手形要件を満たすために振出人欄に署名せざるを得ず、結果的に印紙税を負担することになります。

ただし、国税庁の見解では、「振出人の署名がない手形でも、引受人や他の手形当事者の署名があれば、その引受人や手形当事者が手形を作成したことになる」とされています。

貿易取引における為替手形

貿易取引で利用されるB/E（Bill of Exchange）は、為替手形の一種です。

為替手形の歴史

為替手形の歴史は古く、中国の山西省平遥にあった金融機関・日昇昌（じつしょうしょう）で、雷履泰（らいりたい）という人物が、1820年代に、銀貨の受け渡しに代えて為替手形を導入したことが始まりとされています。

これにより、運搬に不便だった銀貨の代わりに紙が使われるようになり、商取引のスピードと安全性が大幅に向上しました。平遥は瞬く間に金融の中心地として栄えましたが、清王朝の滅亡と経済の混乱により、衰退しました。

しかし、平遥は全盛期の姿をよく留めているため、1997年にはユネスコ世界遺産に登録されました。この地は、商取引の世界に革命をもたらした都市と金融機関の文化遺産として高く評価されています。

自己宛為替手形

通常、為替手形は振出人、受取人、支払人の三者が関与しますが、振出人と支払人が同一である為替手形を自己宛為替手形と呼びます。これは、会社組織内で個別の帳簿を持つ支社・支店・工場などが、本社や他の支社などを支払人として振り出す場合に該当します。印紙代がかからないため、節約のために用いられることもあります。

自己受為替手形

自己宛為替手形とは逆に、振出人と受取人が同一である為替手形を自己受為替手形と呼びます。これは、支払人に売掛金の決済方法として手形を指定することで、支払期日が確定していない売掛金を確実に回収する目的で振り出されます。

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