アムール川の流血や

アムール川の流血や

『アムール川の流血や』は、旧制第一高等学校（通称、一高）の寮歌として1901年に制作された楽曲です。その正式な名称は「第11回紀念祭東寮寮歌」であり、広く知られる通り、冒頭の歌詞部分から名づけられました。この楽曲は、塩田環が作詞を、栗林宇一が作曲を担当し、いずれも学生による制作でした。そのため、この歌は一高寮歌の初期の代表的な作品として位置づけられています。

歴史的背景と内容

『アムール川の流血や』が作られた1901年という年は、日露戦争の前夜とも言える緊迫した時代でした。特に、義和団の乱の際、ロシア軍が中国の江東六十四屯を襲撃した事件が背景にあります。この楽曲の歌詞には、当時の日本の不安定な状況や、「日本が清に代わる」という意識が色濃く反映されています。

この楽曲は、他の軍歌や労働歌とも関連があります。特に、声楽家の藍川由美によると、永井建子が1899年に発表した軍歌「小楠公」が原曲であるとされています。『アムール川の流血や』が栗林宇一によって作られたと思われるのは1901年となりますが、その旋律は他の楽曲とも浸透し、広がりを見せていました。

旋律の影響と派生

特筆すべきは、当時の学生たちが『アムール川の流血や』の旋律を用いて新たな歌を創作した点です。一高では「征露歌（ウラルの彼方）」が生まれ、この旋律に乗せられた歌が次第に広まっていきました。また、一高以外でも、青森県立弘前中学校（現在の弘前高校）、大阪府立北野中学校（現・北野高校）、滋賀県立彦根中学校（現・彦根東高校）の定番の楽曲にもこのメロディの影響が見られます。さらに、千葉県市川市立行徳小学校や中国分小学校など、地域の学校でもこの旋律が応援歌として微細に展開されました。

征露歌と日露戦争

日露戦争勃発の1904年、戦意高揚のために一高で歌われた「征露歌」は、『アムール川の流血や』の旋律を引き継いだもので、多くの学生たちに支持されました。この歌は、紀元節に行われた奉祝集会で披露され、まさに戦時下の雰囲気を象徴する曲として位置づけられています。

総括

『アムール川の流血や』は、一高の歴史の一部としてだけでなく、広く日本の音楽文化や学生運動に影響を与えた重要な作品です。この曲が持つメロディーの力は、学生たちの士気を高め、戦争の時代背景を反映するものとして、時代を超えて語り継がれています。

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