江東六十四屯

江東六十四屯の歴史

江東六十四屯（こうとうろくじゅうしとん）は、かつてアムール川の左岸に広がっていた広大な中国人居留区を指し、中国・黒竜江省の黒河市と対岸に位置するロシアのブラゴヴェシチェンスク周辺に存在していました。この地域は、64の村落から成り、その広さは約3,600平方キロメートルに及びます。1860年に締結されたアイグン条約によって、アムール川左岸の外満洲はロシアに譲渡されましたが、江東六十四屯に存在する多くの中国人居留民により、この地域は形式上清の管理下に置かれていました。

アムール川関連の事件

1900年に義和団の乱が発生する中で、義和団の一部がこの居留区を含むブラゴヴェシチェンスクを占拠しました。この状況を利用し、ロシアは満洲全域への進出を試みました。ロシア軍は、7月13日にミハイル号を用いて武力行使を開始し、数日後には約3,000名の清国人を殺戮する事件が発生します。このような事件は、阿ムール川の対岸に居住する中国人に深刻な影響をもたらし、結果的に約25,000人もの清国人が虐殺されたと言われています。

これらの出来事により、江東六十四屯における中国人の居留は消え、清の支配が失われることとなりました。これが日本国内での対ロシア警戒感を一層強める要因となり、日本各地では反ロシア大集会が開催されることになります。江東六十四屯の崩壊は、日本の学生たちによって作られた寮歌『アムール川の流血や』としても歌われています。

領土問題の進展

中華民国が成立した後も、北洋軍閥や北京政府、さらには国民政府においても、江東六十四屯をロシアに占領されることは合法ではないと考えられ、この問題は長年にわたり棚上げされました。特に1991年以降、国境に関する協定が進められ、江沢民とボリス・エリツィンの間での条約では、中華人民共和国がこの地に対する主権を放棄することが認められました。しかし、現在でも中華民国は法的にはこの地域に対する主権を保有し続けています。

中国の「六場戦争」構想

2013年には、中国のメディアで2020年から2060年にかけて実施されるとされる中国の「六場戦争」計画が報じられました。この計画では、台湾やベトナム、インド、日本、そしてロシアからの領土拡張を意図していますが、専門家によると、実際には多くの困難要因が存在します。特にインドとの関係において、中国が意図する戦略的動きは、現地の安定性や外部の干渉によって阻まれる可能性が高いとの見解が示されています。

江東六十四屯は、単なる地理的な領域に留まらず、中国とロシアの歴史的な複雑さ、さらには日本を含む周辺国との緊張関係を顕在化させる重要な地域でもあります。その後の外交関係や領土問題も含め、引き続き注目される課題です。

もう一度検索