アメリカンズ

ナムコ（後のバンダイナムコゲームス）が開発・販売を手掛ける人気野球ゲームシリーズ『ファミスタ』およびその派生作品において、プレイヤーが操作できる架空のプロ野球チームの一つとして「アメリカンズ」（Americans）が登場します。その略称は「A」または「Am」と表記されることが一般的です。このチームは、実在しない設定の球団でありながら、作品によってはそのチームカラーや位置づけが大きく異なるユニークな存在です。特に、所属選手の多くがアメリカ合衆国の主要な都市名をニックネームとして冠している点が大きな特徴ですが、シリーズの中にはこの原則から外れる例外的な選手が登場するケースも存在します。

アーケード版における登場

アーケードゲーム市場向けに展開された『SUPERワールドスタジアム』（略称：SWS、1991年稼働開始）において、アメリカンズは初めてその姿を見せました。この初期のSWS版アメリカンズは、メジャーリーグベースボール（MLB）のアメリカンリーグに加盟する球団から選抜された選手たちをモデルにした、言わばリーグのオールスターチームとして設定されていました。同じくMLBのナショナルリーグ選抜チームである「ナシオナルズ」と対をなす存在でした。

しかし、続く『SWS'92』では一旦チーム名としての登場機会を失いますが、『SWS'96』において「U.S.A」（略称：USA）という新たな名称でアーケード版に再び登場します。このU.S.Aチームは、アーケード版シリーズの最終作である『SWS2001』まで継続して登場しました。U.S.Aの所属選手も基本的にはMLBの本拠地となっているアメリカの都市名を冠していましたが、中にはカナダの都市名（例えばモントリオールやトロント）を冠した選手や、特徴的なトルネード投法を操る「ヤマト」という日本人らしき名前の投手も所属するなど、多様な構成が見られました。ユニフォームデザインは、家庭用版のアメリカンズが採用するものとは異なり、青と赤を組み合わせた配色が特徴でした。また、チームのマスコットキャラクターやペットマークには、自由の女神像がモチーフとして使用されていました。

家庭用および携帯ゲーム機版における登場

家庭用ゲーム機市場においては、アメリカンズは異なる経緯をたどって登場しました。ファミリーコンピュータ（ファミコン）向けに展開された『プロ野球ファミリースタジアム』シリーズのうち、『'87』から『'92』までの5作品、そしてゲームボーイ版『ファミスタ』、PCエンジン版『プロ野球ワールドスタジアム』、さらにはパソコン向け各機種版に登場した「メジャーリーガーズ」（略称：M）というチームが、アメリカンズの実質的な前身と位置づけられます。

「アメリカンズ」という名称で初めて登場したのは、1992年に発売されたスーパーファミコン版の第一作『スーパーファミスタ』とゲームボーイ版『ファミスタ2』です。この後、一時的に作品から姿を消しますが、1996年発売の『スーパーファミスタ5』で再び登場を果たし、以降の多くの家庭用および携帯ゲーム機向けタイトルでプレイヤーに親しまれる存在となりました。家庭用版のアメリカンズに所属する選手名も、ニューヨーク、ヒューストン、シアトルなど、アメリカの主要都市名が主に付けられています。彼らのユニフォームは、前身であるメジャーリーガーズやアーケード版のU.S.Aチームとは全く異なる、黄色を基調としたデザインが採用されていました。

1997年発売のプレイステーション版『ワールドスタジアムEX』以降、家庭用タイトルからは再び一時的に登場しなくなります。この期間、1999年発売の『ワールドスタジアム3』から2002年発売の『ファミスタアドバンス』にかけては、「メリケンウォーリアーズ」（略称：MW）という、実在のメジャーリーガーをモデルにした変名選手で構成されるチームが登場し、アメリカンズの役割を引き継ぎました。ただし、この家庭用での空白期間中も、アーケード版では『SWS'96』から『SWS2001』まで、前述のU.S.Aチームが実質的にアメリカンズと同様のコンセプトで登場を続けていたことは特筆すべき点です。

その後、2007年に発売されたニンテンドーDS向けタイトル『プロ野球ファミスタDS』において、実に10年ぶりに「アメリカンズ」の名称でチームが復活しました。続く『ファミスタDS2009』にも登場しましたが、『ファミスタDS2010』では、前年に開催された第2回ワールド・ベースボール・クラシック（WBC）におけるアメリカ合衆国代表チームをベースとした「アメリカンイーグルス」（略称：AE）が登場したため、アメリカンズとしての登場は見送られました。

その他の関連情報

いくつかの例外的なケースや関連チームについても言及しておく価値があります。例えば、ゲームボーイ用ソフト『ナムコギャラリーVOL.2』に収録された『ファミスタ4』に登場する「オリジナルズ」（略称：O）というチームは、その名称こそ前作『ファミスタ3』のエディットチームと同じですが、所属選手の名称やデータは『ファミスタ2』に登場したアメリカンズのものがそのまま使用されていました。

また、ファミリーコンピュータ版の『ファミスタ'94』では、前作『ファミスタ'93』から登場している、NPB（日本プロ野球）所属の外国人選手で構成されるオールスターチーム「オールアメリカン」（略称：A）に、当時ダイエーに所属していたリー・タネル投手以外の実在投手が一人しかいなかったため、その穴を埋める形で「ろす」「さんふらん」「しかご」「はわい」「ぐあむ」「ぼすとん」といったアメリカの地名を冠した架空の投手が複数名追加された事例も見られます。これは厳密にはアメリカンズやその前身・後継チームとは異なりますが、地名選手が登場する例として興味深いでしょう。

ファミスタシリーズにおけるアメリカンズは、登場するプラットフォームや年代によってその姿や位置づけを変化させながらも、常にシリーズの個性的なチームの一つとして、プレイヤーに親しまれてきました。その歴史は、シリーズ自体の変遷とも深く結びついています。

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