アメリカン・パトロール

『アメリカン・パトロール』（American Patrol Op.92）は、19世紀後半にフランク・W・ミーチャムによって作曲された行進曲です。原題の通り、アメリカの巡邏兵（パトロール）をテーマにしたこの曲は、軽快で覚えやすいメロディーが特徴で、長年にわたり世界中で愛されています。別名『アメリカ巡邏兵』とも呼ばれています。

楽曲構成と特徴

『アメリカン・パトロール』は、単純な行進曲にとどまらず、いくつかの有名なメロディーを巧みに組み込んでいる点が特徴です。具体的には、『コロンビア、大洋の宝』、『ディキシー』、『ヤンキードゥードゥル』といったアメリカを代表する愛国的な旋律が、曲中に効果的に引用されています。これらのメロディーが組み合わさることで、アメリカの多様な文化や歴史を象徴するような、豊かな音楽体験が生まれます。

楽曲は、遠くから巡邏兵の足音が聞こえてくるような静かな始まりから、徐々にクレッシェンドし、巡邏兵が目の前を堂々と行進していく様子が目に浮かぶような展開を見せます。そして、再び音楽は静まり、巡邏兵が遠ざかっていく様子が表現され、全体として一つの物語を聴いているかのような印象を与えます。

多様な演奏形態

『アメリカン・パトロール』は、吹奏楽の定番レパートリーとして広く知られていますが、その魅力は吹奏楽にとどまりません。管弦楽、ピアノ、そしてグレン・ミラーによるジャズアレンジなど、様々な編成で演奏されています。特にグレン・ミラーのアレンジは、スウィングジャズの軽快なリズムと、『アメリカン・パトロール』のメロディーが見事に融合した名演として知られています。それぞれの演奏形態によって、楽曲の異なる魅力が引き出され、幅広い層の音楽ファンに楽しまれています。

みんなのうたでの紹介

1967年3月には、NHKの『みんなのうた』で『ゆかいな行進』というタイトルで放送されました。峯陽が作詞、前田憲男が編曲を手掛け、デューク・エイセスとシンギング・エンジェルズが歌唱を担当しました。このバージョンは、子供向けの親しみやすい歌詞と、明るく楽しいアレンジが特徴で、多くの子供たちに『アメリカン・パトロール』のメロディーを届けました。「みんなのうた発掘プロジェクト」によって音声が提供され、2020年2月 - 3月にはラジオで53年ぶりに再放送され、再び注目を集めました。

その他のエピソード

2014年3月15日のダイヤ改正からは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの乗り換え駅である大阪環状線西九条駅で、発車メロディとして使用されています。この選曲は、楽曲の持つ明るく楽しいイメージが、テーマパークへの期待感を高める効果を狙ったものと考えられます。

『アメリカン・パトロール』は、時代を超えて愛される行進曲であり、その軽快なメロディーは、聴く人に元気と活力を与えてくれます。

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