アメリカ合衆国の医学教育

アメリカにおける医師の養成課程

アメリカで医師になるには、日本の医学部のような「医科大学院」に進学する必要があります。本記事では、アメリカの医師養成機関の種類、入学から資格取得までの流れ、試験制度について詳しく解説します。

医師養成機関の種類

アメリカには、医師を養成する機関として、以下の2つの類型があります。

Medical School（メディカル・スクール）: 日本でいう医学部に相当し、臨床医の養成を目的としています。修了者には「M.D.（Medicinae Doctor）」の学位が授与されます。
College of Osteopathic Medicine（オステオパシー医学校）: オステオパシーという手技療法をルーツとする教育機関ですが、現在は一般的な医学教育も行っています。修了者には「D.O.（Doctor of Osteopathic Medicine）」の学位が授与されます。

医師資格の特徴

アメリカの医師資格は、連邦法ではなく各州の州法に基づいており、ある州の医師資格の効力は、当該州内に限定されます。メディカル・スクール、もしくはオステオパシー医学校を卒業した後に、各州の州法の定める要件を満たし、当該州の医師資格を取得する必要があります。

進学のステップ

1. 4年制大学

文系・理系を問わず、一般の4年制大学に入学します。医学部進学のために、以下のいずれかの方法で基礎科学を履修する必要があります。

主専攻の他に、物理学、一般化学、有機化学、生物学の基礎科学を履修する。
「Pre-Med Course（医学進学課程）」に進み、物理学、化学、生物学を強化したプログラムを履修する。

多くの場合、ボランティア活動の経験が求められます。総合病院や研究所でのボランティア経験が一般的です。

2. 医科大学入学試験（MCAT）

4年制大学を卒業後、「医科大学入学試験（MCAT：Medical College Admission Test）」という共通試験を受けます。MCATのスコア、大学の成績、小論文、面接などを総合的に評価され、各医科大学の入学が選別されます。

3. 医科大学院

メディカル・スクールまたはオステオパシー医学校に進学します。4年制の課程で、臨床医としての教育を受けます。州立大学の場合、その州の出身者が優先されることがあります。教育は、病院の医師ではなく、医学教育の専門家が行います。

卒業後の研修

1. インターンシップ

メディカル・スクールを卒業後、研修病院で1年間のインターンシップを行います。主要な診療科をローテーションするのが一般的です。

2. レジデンシー

インターンシップ修了後、各科ごとに研修期間の異なる「レジデンシー」に進みます。各科で3〜6年の研修を行います。

3. フェローシップ

レジデンシー修了後、専門医研修である「フェローシップ」に進むことができます。各科で3〜10年の研修を行い、専門医資格を取得します。

試験

医科大学での修学、卒業後の病院研修と並行して、以下の試験を受験する必要があります。これらの試験に合格することが、次の段階に進むための条件となります。

MCAT: 医科大学入学のための共通試験。
USMLE: メディカル・スクールの学生または卒業生が受験する、合衆国医師免許試験。Step1、Step2（CK・CS）、Step3の3段階があります。
COMLEX: オステオパシー医学校の学生または卒業生が受験する、オステオパシー医師免許試験。Level 1、Level 2（CE，PE）Level 3の3段階があります。
Board Certification Examination: 専門医資格を取得するための試験。

医師免許の申請

法的な医師免許は各州ごとに発行されます。医療行為を行う州の医事委員会に申請し、免許を発行してもらう必要があります。多くの州で、USMLE Step 3までの合格と、インターンシップ〜レジデンシー頃の2年間の臨床研修終了証明によって申請できます。

アメリカの医師免許は数年ごとの更新制であり、更新の際には、生涯医学教育認定評議会での講習会参加などによる単位取得が必要です。

主要な医学部／医学大学院

ハーバード・メディカル・スクール （HMS）
ジョンズ・ホプキンス大学医学部（JHUSOM）
ペンシルベニア大学 医学大学院 （Penn Med）
ニューヨーク大学・グロスマン医科スクール（NYU Grossman）
スタンフォード大学医学大学院（Stanford Medicine）
コロンビア大学ヴァジェロス医学校（VP&S）
カリフォルニア大学サンフランシスコ校（UCSF Medicine）
デューク大学メディカル・スクール（Duke Med）
イェール大学医学大学院（YSM）
セントルイス・ワシントン大学医学部（WUSM）

まとめ

アメリカで医師になるには、長い道のりを経る必要があります。しかし、高度な医療を提供し、人々の健康に貢献できるという大きなやりがいがあります。本記事が、アメリカで医師を目指す方々にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

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