アメリカ合衆国の国章

アメリカ合衆国の国章

アメリカ合衆国の国章、正式にはグレートシール（Great Seal of the United States）は、アメリカの公式なシンボルとされる図像です。この国章は円形で、アメリカ合衆国の国璽の表面のデザインをもとにしたものであり、主にパスポートや貨幣、政府関連の公式文書に用いられています。
実際には、アメリカは公式な国章を策定したことはありませんが、国璽の図柄は広く認知され、事実上の国章として扱われています。特に、25セント硬貨の裏面や各紙幣にもそのデザインが採用されています。

国璽とは

グレートシールは、政府や宗教機関などが重要な文書に押印するための印章を指し、アメリカの国璽もその一つです。イギリスの国璽と同じく、物理的には平らな円盤状であり、裏面にも図柄が刻まれています。アメリカの国璽は、国務長官の管理のもとに保存されており、色付けされていない実物が存在していますが、そのデザインのカラースキームは公式に決められています。

表面のデザイン

国章の表面には、ハクトウワシ（ボールドイーグル）が中央に描かれています。この鷲の羽の枚数は33枚、13片の実が付いたオリーブの枝と13本の矢をそれぞれの足でしっかりと握っています。このデザインは、アメリカの「平和」と「戦争」の象徴であり、オリーブの枝に向かっている鷲の頭は平和の願いを表現しています。また、鷲はアメリカのモットー「E Pluribus Unum（多様性の中の一体）」が書かれた布をくわえています。
その上には、青地に輝く13個の星が描かれており、これはアメリカ独立に関係しているものとされています。特に独立戦争中にアメリカを支援したユダヤ人投資家の意向によって、この星が国章に含まれることになったという説があります。

国章全体には「13」という数字が多く使用されており、これにはアメリカ合衆国が独立した当初の州の数が反映されています。星やストライプ、オリーブの葉、矢の本数にもそれぞれ13が関連しており、この数字はアメリカ独立の歴史を象徴する重要な要素です。

裏面のデザイン

国璽の裏面には、煉瓦造りの13層ピラミッドが描かれており、その頂上には「プロビデンスの目」と呼ばれる目が見通しで描かれています。ピラミッドの象徴は新たに誕生した国家が未来に光を与えるというメッセージを意味しています。このデザインにはラテン語の「Novus ordo seclorum」（時代の新しい秩序）や「Annuit cœptis」（企てを支持した）などの文言も含まれています。

ピラミッドには「MDCCLXXVI」と記されており、これは1776年を示すローマ数字で、アメリカ独立宣言の年を記念しています。このデザインの基本的なアイデアは、独立戦争の際に発行された大陸紙幣に由来しており、それに関わったデザイナーの一人は、アメリカの国旗や国璽のデザインにも関わったフランシス・ホプキンソンです。

陰謀論とフリーメイソン

国璽の裏面のデザインがフリーメイソンリーのシンボルに似ているため、アメリカ合衆国とフリーメイソンとの間に関連性があるという陰謀論が存在します。国璽のデザイナーであるピエール・デュ・シミティエールはフリーメイソンには所属していなかったものの、アメリカ哲学協会と呼ばれる組織には多くのフリーメイソンが関与していました。

国章に込められたシンボルやデザインは、アメリカの歴史や文化を反映しており、それらは単なるデザイン以上の意味を持っています。

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