国璽

国家の象徴：国璽の歴史と運用

国璽とは、国家の象徴として用いられる印章、あるいはその印影です。国家の重要な文書、特に外交文書などに押印され、国家の威厳と権威を示す役割を担っています。本稿では、日本、中華民国、大韓民国、満洲国、中華人民共和国、そして西洋諸国の国璽について、その歴史、運用方法、法的な位置づけ、そして関連する刑罰規定を詳細に解説します。

日本の国[[璽]]

日本の国[[璽]]は、金製の角印で、「大日本國璽」と篆書体で刻まれています。約8.79cm四方、重さ約3.5kgで、天皇の印である御[[璽]]よりやや小さいサイズです。明治維新以前は「内印」「外印」と呼ばれていた天皇と太政官の印章が存在しましたが、国璽という名称の印章は存在しませんでした。明治維新後、新たな国璽が制作され、現在に至るまで使用されています。宮内庁侍従職が保管・管理し、重要な文書に押印されます。国璽の使用は、皇位継承儀式など国家の重要な儀式にも用いられ、その歴史と伝統は日本国家の象徴として大切に守られています。

国璽の変遷は、明治維新後の混乱期を反映しています。当初制作された石印は不評だったため、現在の金製の国璽が製作されました。これは、京都の鋳造師と印司による、約1年におよぶ精緻な作業の成果です。印文は制作以来変更されておらず、国家の継続性を象徴しています。

国璽の使用にあたっては、専用の朱肉、定規を用い、丁寧に押印されるのが慣例です。保管には紫と白の袱紗と革製ケースが用いられ、その厳格な取り扱いからも、国璽の重要性が伺えます。

法制面では、大日本帝国憲法下では勅令に国璽の使用が規定され、戦後も慣例として踏襲されています。また、刑法では、国璽の偽造や不正使用に対する厳格な罰則が定められています。

中華民国の国璽

中華民国の国璽は、「中華民國之璽」と篆刻された翡翠製の角印です。国書、批准書など重要な外交文書に使用されます。他に「榮典之璽」と呼ばれる、栄典を授与する際に用いられる国璽も存在します。こちらは羊脂玉製です。両国璽は、国民政府による中国統一後、製作され、台湾への移転後も、総統府で保管され、政権の象徴として継承されています。

大韓民国の国璽

大韓民国の国璽は、大統領令に基づき、憲法公布文や重要な外交文書などに用いられます。これまで5代の国璽が製作され、現在の5代目は金合[[金]]製で、「大韓民国」とハングルで刻まれています。初代国璽は行方不明となっており、その行方不明を巡って懸賞金がかけられた報道もあるほどです。その後継の国璽も、製作過程での不正疑惑により廃棄されたものもあり、国璽の製作と管理の厳格さが求められていることがわかります。

満洲帝国の国璽

満洲帝国の国璽は、「滿洲帝國之寶」と刻まれた白玉製の印章です。満洲国尚書府が保管・管理し、詔書や勅書などに使用されました。初期には皇帝が直接保管していましたが、運用上の問題から尚書府秘書官が管理する体制に移行しました。

中華人民共和国の国印

中華人民共和国の国印は、「中華人民共和國中央人民政府之印」と刻まれた角印です。建国直後から1959年まで使用され、その後は博物館に収蔵されています。

西洋の国璽（グレートシール）

西洋諸国では、国璽は「グレートシール」と呼ばれ、東アジアの国璽とは異なり、平らな円盤状で、溶けた封蝋に押印して使用されます。イギリス、フランスなど多くの国で、国璽の使用と管理が伝統的に行われています。

国璽は、国家の象徴として、その歴史と伝統を反映する重要な存在です。それぞれの国璽の材質、デザイン、そして運用方法は、歴史的背景や政治体制を反映しており、国家のアイデンティティを象徴する重要な要素と言えるでしょう。

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