アメリカ合衆国の地方行政区画

アメリカ合衆国の州と地方行政構造

アメリカ合衆国は50の州から構成されており、各州は連邦政府と主権を共有しながらも独立した統治体としての役割を果たしています。この州の自律性は特に高く、単なる地方行政区画という位置づけは誤解を招く可能性があります。各州は独自の憲法を持ち、州内の自治体を設立する権限を有しています。

行政区画の構造

アメリカ合衆国の州内には、様々な地方行政体系が存在します。一般的に、州憲法に基づいて郡（county）が設置されており、これは日本の都道府県に似た役割を持っています。ルイジアナ州では「parish」、アラスカ州では「borough」という名称が使われます。全体で3,100ほどの郡があり、その数は州によって大きく異なります。例えば、デラウェア州には3つの郡がある一方で、テキサス州には254郡存在します。

各郡には、郡政府という行政機関が設置されており、この機関は州による法的認可を受けた法人です。さらに、各州には郡とは別に自治体が存在し、これらは主に市町村レベルの機能を担っています。アメリカ全体で約84,400の自治体がありますが、これらの自治体は州によって設立されたのではなく、住民による設立が必要です。したがって、自治体が存在しない地域が多数存在するのも特徴です。

様々な地方政府の種類

地方政府は大きく分けて、一般目的の地方政府と特別目的の地方政府に分類されます。一般目的地方政府には、郡政府や通常自治体が含まれ、通常自治体は法人格を持つ自治体で、主に市や町の形態をとります。これらは約20,000あります。特にカリフォルニア州では、自治体が設立された地域を市と呼び、残りの地域は非自治体と見なされます。

郡と市の関係は複雑で、一般には「郡⊇市」となり、ある場合には市が郡を完全に包含する「郡=市」という状況や、逆に市が複数の郡を包含することもあります。アメリカでは、市が独立して郡に属さない場合（独立市）は43あります。

特別目的地方政府

特別目的地方政府には、学区政府や特別区政府が含まれます。これらは通常の自治体と重なり合って存在し、特定の行政サービスを提供する役割を果たします。このような地方政府は日本の一部事務組合に似ていますが、地域住民を構成員とする点が異なります。特別区には学校や水道、警察などのサービスを提供するための機関があります。

非法人地域と未組織地域

地方自治体が設立されていない地域は、「非法人地域」と呼ばれます。この地域は住民の合意がなければ法人として成立せず、自治体が自然消滅する場合もあります。このような地域の多くは、州内の特定の場所でも存在し、未組織地域と呼ばれ、8州において法律で定められた小行政区画に属します。

特別な地域

アメリカには、州に属しない直轄地や海外領土も存在します。たとえば、コロンビア特別区やアメリカ領サモア、グアム、プエルトリコなどがその代表例です。これらの地域は特定の法的地位を持っており、住民が存在する場合もあります。

このように、アメリカ合衆国の州と地方行政区画は、構造的にも機能的にも多様性に富んでいます。各州が独自の憲法を持ち、地方政府との関係がおおいに異なることから、地方行政は単純なものではないことが伺えます。

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