アメリカ合衆国憲法修正第18条

アメリカ合衆国憲法修正第18条と禁酒法の歴史

アメリカ合衆国憲法修正第18条（Eighteenth Amendment）は、飲料用アルコールの製造、販売、流通を禁止した憲法の修正であり、かつてアメリカで施行されていた禁酒法の根拠となりました。この修正は1919年に成立し、1933年に修正第21条により廃止されました。この期間、アメリカでは多くの社会的、経済的な影響が生じました。

経緯と背景

禁酒法の根源は、アメリカの清教徒文化にありました。この影響により、アルコールには強い批判が寄せられ、1851年にメイン州で最初の禁酒法が制定されると、20世紀初頭には18の州で同様の法律が施行されました。特に女性を中心とする禁酒運動が活発となり、家庭生活を重んじる声が強まりました。

第一次世界大戦の際、戦時中の穀物不足を防ぐための経済的理由も加わり、全国的な禁酒法の制定に対する機運が高まりました。こうした背景から1917年、合衆国議会は禁酒法制定を目的とした憲法修正の提案を行い、1919年1月には3/4の州で批准され、憲法修正第18条が成立しました。

その後、憲法修正を受けてボルステッド法が制定され、1920年から本格的に禁酒法が施行されました。この法律により、飲料用アルコールの製造や流通が厳しく取り締まられることとなりましたが、自宅での飲酒は禁止されなかったため、富裕層は施行前に大量の酒をストックする代わりに、法律の裏をかく方法が広がりました。

在り方と問題点

ボルステッド法は、飲酒を禁止するはずだったものの、多くの抜け道が存在する「ザル法」とされ、実際には無力と化しました。禁酒によって犯罪を抑える意図があったものの、反対にアルコールを巡る犯罪は増加し、密造酒や密売行為が rampant になりました。特にカナダとの国境を越えたアルコールの流入が問題視され、この状況はカナディアン・ウイスキーの人気を高める一因となりました。

禁酒法の施行を担当した執行官は、報酬が低く、訓練も受けていないために密造業者やギャングに容易に買収される事例も多かったです。この結果、失明や死亡を招く密造酒の取り引きや、ギャング同士の抗争が治安の悪化を引き起こしました。

禁酒法の理念の一つは、不健全な酒場を排除することでしたが、実際には「スピークイージー」と呼ばれる非合法酒場が花盛りになり、社会が逆に乱れました。さらに、世界恐慌の影響もあり、財政不足の中では密売酒の非課税が問題視されるようになりました。

廃止の経緯

フランクリン・ルーズベルトが大統領に就任すると、彼は禁酒法の廃止を公約に掲げました。1933年、連邦議会でアルコール度数3.2%以下の酒類の販売を許可する法律が可決され、さらに改正第21条が成立しました。これにより、1933年12月5日には禁酒法が正式に廃止され、アメリカの社会は新たな時代を迎えました。

禁酒法は13年10か月続いた間に数々の問題を引き起こし、多くの人々にとっては「悪法」として記憶されています。しかし、現在でもアメリカの一部の州や地域では酒類に対する規制が残っており、禁酒法時代の影響は完全には消えていません。

文化的影響

禁酒法は文学や映画、テレビドラマなど多様なメディアで取り上げられています。F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を始め、多くの作品が禁酒法時代の社会を背景にしています。これらの作品は当時の世相を反映しており、その影響が現在も続いていることを証明しています。

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