アメリカ大使館爆破事件 (1983年)

1983年 アメリカ大使館爆破事件

1983年4月18日、レバノンのベイルートに所在するアメリカ大使館が、自動車爆弾による自爆テロに見舞われました。この事件は、レバノン内戦の複雑な背景と、中東地域におけるテロの形態に大きな変化をもたらしました。

事件の背景

1982年6月、イスラエル軍はレバノンに侵攻し、パレスチナ解放機構（PLO）はチュニジアへと拠点を移しました。これにより、一時的に内戦の要因は沈静化したと考えられました。事態収拾のため、アメリカ海兵隊を中心とする多国籍軍が平和維持活動としてレバノンに進駐しました。

事件の発生

1983年4月18日午後1時頃、一台のワゴン車がベイルートのアメリカ大使館に近づきました。この車両は、元々アメリカのテキサス州で販売された後、中古車として中東に送られたものでした。大使館への進入許可を得たワゴン車は、玄関前に停車し、そのままドアを突き破って内部で爆発しました。

この爆発により、アメリカ人大使館員17名（うち8名はCIA職員）を含む63名が死亡、120名が負傷するという大惨事となりました。この事件は、自動車爆弾を用いた最初の自爆テロの一つであり、その手法はレバノンから中東各地へと広がり、その後のテロの様相を大きく変えることになりました。イスラム聖戦機構が犯行声明を出しましたが、ヒズボラの関与も疑われています。

事件の影響

同年10月23日には、アメリカ海兵隊の基地がメルセデスのワゴン車による自爆テロに遭い、241名が死亡しました。同日、フランス空挺部隊の基地も同様の攻撃を受け、64名が犠牲となりました。これらの事件の犯人は死亡し、背後関係は特定されませんでしたが、平和維持軍は撤退を余儀なくされました（ベイルート・アメリカ海兵隊兵舎爆破事件）。

12月3日、シリア軍がアメリカ軍の戦闘機を砲撃しました。これに対し、米軍は報復として攻撃機を発進させましたが、2機ともシリア軍の地対空ミサイルによって撃墜されました。米軍は再度報復としてシリア軍基地への艦砲射撃を実施し、基地を破壊しました。

しかし、海兵隊基地への襲撃と米軍機撃墜事件を受け、アメリカ国内の世論はレバノンからの撤退を強く求めるようになりました。その結果、1984年2月26日にアメリカ軍はレバノンから撤退し、その後フランス軍とイタリア軍も撤退しました。

まとめ

1983年のアメリカ大使館爆破事件は、レバノン内戦という複雑な政治状況下で発生し、自爆テロという新たなテロの形態が中東地域に拡大するきっかけとなりました。この事件は、国際社会における平和維持活動の難しさを浮き彫りにするとともに、中東情勢に深い影を落とすことになったのです。

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