アメリカ対日協議会

アメリカ対日協議会（ACJ）: 戦後日本の影で暗躍した圧力団体

アメリカ対日協議会（ACJ）は、1948年6月に設立された、戦後日本の政治経済に多大な影響を与えた謎めいた圧力団体です。その活動は、日本の民主化を阻害し、冷戦下における親米保守政権の樹立に大きく貢献しました。本稿では、ACJの活動内容、中心人物、そしてCIAとの繋がりを詳細に解説します。

ACJの中心人物と設立の背景

ACJの中心人物の一人として、ユージン・ドゥーマンが挙げられます。宣教師の子として日本で生まれ育ち、日本の政治・経済エリート層との広範な人脈を築いていました。彼は戦前から対日宥和政策を提唱し、戦後は戦略情報局顧問を務めるなど、アメリカ政府内での地位を確立していました。ドゥーマンは、天皇制維持と経済集中を容認する宥和的な降伏条件を主張し、日本をアメリカの経済的従属国として利用しようと考えていました。

もう一人の中心人物は、『ニューズウィーク』誌編集者のハリー・フレデリック・カーンです。同誌オーナーは日本の経済力をアメリカの利益のために活用することを望んでおり、カーンは財閥解体を目的とした過度経済力集中排除法を激しく批判していました。

ドゥーマンとカーンは、元大統領ハーバート・フーヴァーの助言を受け、共同でACJを設立しました。彼らは政府高官や共和党有力者とのコネクション、そして『ニューズウィーク』誌を活用し、日本の旧体制勢力の復権と財閥解体の阻止を目指して強力な圧力をかけました。

ジャパン・ロビーとメディアコントロール

ACJは、ジャパン・ロビーの中核組織として機能していました。ジャパン・ロビーは、長年にわたって日本に駐在したジョセフ・グルー元大使を中心とする勢力であり、グルーの人脈は日本の政財界に広く及んでいました。

ACJは、ニューヨーク・タイムズ、シカゴ・トリビューン、タイム誌などの影響力のあるメディアを通じて、その主張を世間に広めました。中でも、『ニューズウィーク』誌は、ACJの目的達成に最も大きく貢献しました。同誌のオーナーは、ハリマン家、アスター家、メロン家、モルガン家といった富裕層であり、彼らの財力と影響力がACJの活動に大きな支えとなりました。

ACJはGHQの民主化政策に反対し、激しい論争を展開しました。彼らは、日本の急激な民主化が共産主義の台頭を招くと主張し、天皇制、財閥、そして強力な保守政党の維持が必要であると訴えました。

冷戦とACJの活動

1948年3月、冷戦論者のジョージ・ケナンがマッカーサーを訪ね、過度経済力集中排除法が日本を共産化させると警告しました。その後、賠償調査団の報告などをきっかけに、財閥解体政策は修正されました。

ジェームズ・リー・カウフマンは、戦前から日本と関係を持ち、戦後はアメリカ政府の対日政策に助言する立場にありました。彼は日本の旧体制との繋がりを利用し、アメリカからの資本導入と経済復興を促進しました。また、彼は日本のテレビ放送にアメリカの技術を導入することを推進しました。

ACJの活動とCIA

ACJは、CIAの前身である戦略情報局（OSS）出身者とも密接に連携していました。特に、フランク・ウィズナーとエヴェレット・ハワード・ハントといったOSS出身者は、CIAの政策調整局（OPC）の中枢を担い、ACJの活動に協力しました。

ACJは、保守政党への資金提供、メディアコントロール、反共産主義プロパガンダの展開などを通じて、親米保守政権の樹立に貢献しました。サンフランシスコ平和条約締結後、ACJの活動は表立って行われなくなりましたが、CIAとの繋がりは継続し、日本の政治・経済に間接的に影響を与え続けました。

結論

ACJは、戦後日本の政治・経済に大きな影響を与えた、謎めいた圧力団体でした。その活動は、旧体制の維持、親米保守政権の樹立、そして日本の冷戦体制への組み込みに大きく貢献しました。ACJの活動は、戦後日本の歴史を理解する上で、重要な要素となっています。しかし、その活動の全貌は未だ不明な点も多く、更なる研究が必要とされています。

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