アユカケ

アユカケについて

アユカケ（鮎掛、学名: Rheopresbe kazika）は、日本固有のスズキ目カジカ科に属する魚で、別名カマキリやアラレウオとも呼ばれています。この魚は、ヤマノカミと同様に「降河回遊」という特異な生活史を持ち、体長は5cmから30cm程度に成長します。特徴としては、無鱗で灰褐色の体に4本の暗色横帯があります。腹びれは吸盤状ではなく分離しており、鰓蓋には大きい棘と小さい棘が対称に並んでいます。アユカケの名前の由来は、伝承に基づいており、鰓蓋の棘にアユを引っ掛けるとの説があるからです。

アユカケは流速の速い水域での適応力が低く、堰堤や魚道を遡上する際にアユやサツキマス、サクラマスといった他の魚種と比べて遅れをとることがあります。そのため、主に「アユカケ」との名称で呼ばれることが多いのですが、昆虫のカマキリと混同されやすいので注意が必要です。

生態

アユカケは動物食性であり、主に冬に産卵します。彼らは沿岸の岩礁帯域で卵を産み、オスが卵を孵化するまで保護します。春には3cm程度の稚魚が川に遡上し、成熟した個体は秋に川を下り再び産卵を行います。生育に適した水温は10〜22℃で、24〜27℃の環境下でも生存が可能です。一般には砂礫底質を好み、中流域に分布していますが、遡上を妨げられた個体は下流域や河口域でも見られます。

稚魚期には水棲昆虫を食べ、成長するにつれて小魚も捕食します。1年で6〜9cm、2年で9〜12cm、3年で13〜17cmに成長します。メスは産卵を終えると、オスは稚魚が孵化して卵の保護を完了すると命を終えます。

環境の悪化は稚魚の生存に悪影響を与え、工場や農業からの排水が水質を悪化させ、堰などの建設が稚魚の隠れ場所を減少させ、結果的に個体数が減少する要因となっています。これに対処するため、人工養殖や放流による個体数の回復が試みられています。

伝承

アユカケにまつわる伝説として、「アユカケは石に化ける」との話があります。この魚は、岩陰に隠れる際、その体色が小石と似ているため、静止しているときにまるで石のように見えることがあります。そのため、捕食者から身を守る術とされ、実際にNHKの取材班がこの行動を確認しています。

また、「トゲで鮎を捕まえる」という伝承も存在します。アユカケの鋭い棘でアユを捕らえると言われていますが、実際に観察されたわけではありません。さらに「冬に腹をみせて浮かび下る」という話もあり、霰が降る夜に大きな腹を上にして流れる様子が語り継がれていますが、これも確認されたわけではありません。

分布と保全状態

アユカケは太平洋側では茨城県久慈川以南、日本海側では青森県深浦町津梅川以南、さらに四国や九州に生息していますが、瀬戸内海沿岸での常駐は確認されていません。近年では北限生息域が青森県で確認されたり、太平洋側での繁殖も報告されています。

多くの自治体で希少な野生生物と認識され、福井県の九頭竜川などでは国の天然記念物に指定されています。また、無許可での採取は禁止されています。環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類（VU）に分類されており、個体数の減少が懸念されています。

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