ヤマノカミ

ヤマノカミ（山ノ神）

ヤマノカミ（学名：Trachidermus fasciatus）は、スズキ目カジカ科に属する中型の淡水魚です。主に東アジアに分布し、特に日本では九州の有明海とその流入河川に限定されています。この魚は、特有の外見と生態から「山の神」や「川の神」と呼ばれることもあり、地域によってさまざまな名前で知られています。

特徴

成魚の全長は約15cmで、体型は前半部が縦に扁平し、後半部分が円筒形です。特に目立つのは、尖った頭部と大きな口で、上顎が下顎よりも前に突き出ています。目は頭部の上に少し突き出ており、特徴的な六角形の形をしています。体には鱗がないものの、顆粒が密に分布し、独特の質感を呈しています。

体色は褐色や灰色で、斑点や鞍状の模様が見られるのも特徴的です。また、繁殖期にはオスとメスの尻鰭基部が鮮やかな赤色になります。

生息地と生活

ヤマノカミは主に底生魚で、通常は単独生活をしています。春から初夏にかけて川を上り、秋になると産卵のために河口へ戻ります。この魚は「降河回遊」という生活史を持ち、海へ降りた後に産卵を行い、再び河川へ戻るのです。

具体的には、11月から12月に水温が低下すると、成魚は海に下ります。そして、1月から3月の間に、カキやタイラギなどの貝殻内に卵塊を産むことが確認されています。卵は粘着性があり、親魚は孵化に至るまで卵を保護します。

仔魚は河口付近でプランクトンを摂取しながら成長し、約3cmに達した時点で川を遡上します。最終的には1年以内に成熟し、再び繁殖期を迎えます。ヤマノカミは通常1年の寿命を持ちますが、飼育環境下では長生きすることもあります。

人間との関わり

日本では特に食用として利用されることは少ないですが、中国では「松江鱸魚」として食材としての価値があります。文学作品にも登場することがあり、古くから珍味として扱われてきました。

保全状況

環境省のレッドリストではヤマノカミは絶滅危惧IB類（EN）として分類されています。特に有明海での堰の建設や環境の変化が要因で、生息数が大きく減少しています。中国でも同様に、個体数の減少が問題視されており、国家二級重点保護野生動物に指定されています。

以上のように、ヤマノカミはその独特な生態と美しい見た目から捉えられている一方で、環境変化によって逐次危機に瀕している魚類です。今後の保護活動と生息環境の改善が求められています。

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