アラスカ準州

アラスカ準州（Territory of Alaska）は、1912年から1959年にかけてアメリカ合衆国に存在した自治的な領域です。それ以前はアラスカ地区として区分されていましたが、この期間を経て、最終的に合衆国の一つの州へと発展しました。

アラスカの自治権獲得に向けた動きは、1899年の刑法成立などに端を発し、連邦議会におけるアラスカ住民の代表を求める声が高まりました。長年にわたる議論を経て、1912年8月24日、ついにアラスカは合衆国の自治的領域として認められることとなりました。同年制定された「第二次基本法」により、正式にアラスカ地区からアラスカ準州へと名称が変更されました。

準州成立後、その人口は着実に増加し、1916年には58,000人に達しました。早期の州昇格を目指す動きもあり、連邦議会の代議員であったジェイムズ・ウィッカーシャムは最初の昇格法案を提出しましたが、当時のアラスカ住民の間で十分な関心を得られず、成立には至りませんでした。1923年にウォレン・ハーディング大統領がアラスカを訪問した際も、広く州昇格への支持を生むには至りませんでした。第二次基本法に基づき、準州は四つの地域に分割されており、州都ジュノーを含む最も人口の多い地域は、他の地域から分離して州となる構想を持っていました。52もの連邦機関が存在する複雑な統治構造は、運営上の大きな課題となっていました。

経済面では、1920年に制定されたジョーンズ法（商船法）が大きな影響を与えました。この法律により、アラスカと外部を結ぶ物流は、米国内で建造・所有され、米国の法律に基づいて登録された船舶で行うことが義務付けられました。結果として、アラスカからの貨物は一度シアトルを経由する必要が生じ、経済的にワシントントン州、特にシアトルへの依存を強めることになりました。当時の合衆国最高裁判所は、アラスカが準州であるため、州間の商行為を規制すべきではないという憲法条項の適用外であると判断。この状況を利用して、シアトルの海運会社は運賃を吊り上げました。

1930年代の世界恐慌は、当時のアラスカ経済の基盤であった水産物や銅の価格を急落させ、賃金は下がり、就労者の数は半減しました。この困難な時代に対応するため、1935年にはフランクリン・ルーズベルト大統領の下で、農業地域からの国民をアラスカのマト・スー谷に移住させ、農業による自給自足を目指す計画が推進されました。ミシガン、ウィスコンシン、ミネソタといった北部の州から、アラスカと気候が似ており開拓者生活に適応できると考えた多くの人々が移住しました。一方で、コンゴ生活向上協会連合がアフリカ系アメリカ人400人の移住を要請しましたが、これは当時の人種的偏見や、特定の地域からの移住者のみが開拓に適応できるという思い込みから拒否されました。

広大なアラスカの土地における探検や入植は、航空機の発達なしには考えられませんでした。飛行機は内陸部へのアクセスの道を開き、人や物資の迅速な移動を可能にしました。しかし、アラスカ特有の厳しい天候や、人口に対するパイロット数の多さから、準州全域には多くの航空機事故発生地点が点在しています。これらの事故には、第二次世界大戦や冷戦期におけるアラスカの軍事力強化に関連するものも少なくありません。

第二次世界大戦は、アラスカの戦略的重要性を際立たせました。1942年6月から1943年8月にかけて発生したアリューシャン方面の戦いでは、日本軍がアリューシャン列島の一部を占領し、合衆国本土への攻撃を試みました。これは、1812年の米英戦争以来、合衆国領土に外国の軍隊が上陸した数少ない事例の一つでした（もう一つは1941年のグアム）。最終的に34,000名もの米軍が投入され、日本軍はアリューシャン列島から撤退しました。

これらの歴史を経て、アメリカ合衆国政府はアラスカの持つ潜在的な可能性を認識するに至りました。そして、1959年1月3日、アラスカは合衆国で49番目の州として正式に昇格しました。同時期に州昇格を目指していたハワイが共和党支持と考えられていたのに対し、アラスカが連邦議会に民主党員を選出する可能性に対する一部共和党員の懸念が、昇格時期に影響を与えた可能性も指摘されています。しかし近年、これらの予測は両州で逆転する傾向も見られます。

アラスカ準州の時代は、自治権の確立、経済的試練、社会的変化、そして戦時下の困難を乗り越え、後のアラスカ州としての発展に向けた重要な準備期間であったと言えるでしょう。

もう一度検索