アラビアガム

アラビアガムとは

アラビアガム（English: Gum arabic）は、アフリカのナイル地方に自生するアカシア属の樹木から得られる天然物質です。一般的にアラビアゴムと呼ばれ、特にアカシアセネガル（Acacia senegal）から採取されることが多いですが、他にもアフリカのいくつかのアカシア種からも採取可能です。これは、樹木の樹皮にできた傷から分泌される樹脂を乾燥させたもので、吸水するとゼラチンのように膨らむ特性を持ちます。アラビアガムは、増粘剤や乳化剤、安定剤として多様に利用されている食品添加物でもあります。

主な産地

アラビアガムの主要な産地はスーダン、チャド、ナイジェリア、セネガル、マリ、ケニアなどがあります。特にスーダンは世界のアラビアガム輸出量の約70%を占めています。1989年のクーデター以降、経済制裁が実施されましたが、アラビアガムだけは規制から外されており、現在も重要な輸出品として位置づけられています。採取方法として、20世紀初頭からラバータッピングが広く用いられるようになりました。

成分と特性

アラビアガムの主成分は多糖類であり、主にアラビノガラクタン（75-94%）、アラビノガラクタン-プロテイン（5-20%）、糖タンパク質（1-5%）が含まれています。これらは粘性や乳化力を持ち、食品や医薬品において安定剤として利用されます。乾燥状態では不規則な粒状や塊状で視覚的には淡黄色または褐色を呈し、水に溶解することで高い粘性を示します。

用途

アラビアガムはその特性から、アイスクリーム、ガムシロップ、医薬品の錠剤コーティング、さらには絵具やインクの製品にも使用されています。特に水彩絵具では固着材として重要な役割を果たしています。その粘性による特性は切手の接着面の糊としても使用されており、以前は植物標本を固定するための接着剤でも好まれていました。

類似品

アラビアガムと似た特性を持つ樹木から採れる類似品も存在します。インドで得られるインドアカシアゴムや、東アフリカの東アフリカゴム、オーストラリアのワットルゴムなどがそれにあたります。また、トラガカントは、ゲンゲやアスパラガスのような他のマメ科植物から得られることがあり、アラビアガムとほぼ同じ用途で使用されます。さらに、サクラゴムと呼ばれる成分も、アラビアガムと似た特性を持つ樹皮から分泌されます。

歴史的背景

アラビアガムは紀元前2500年頃のエジプトで使用されていた記録があり、特にミイラ作りにおいて接着剤として利用されていました。13世紀以降、アフリカからヨーロッパへの貿易において重要な役割を果たしました。特に1445年にはポルトガルがアラビアガムの輸出を始め、その後はフランス、オランダ、イギリスなどがこの資源を巡って争いました。18世紀には、アラビアガムの主要な交易地点がセネガルに移り、更なる生産と輸出の増加を迎えました。

• ---

アラビアガムは、驚くべき用途の広がりと歴史的背景を持つ重要な天然物質です。現在もその特性が評価され、さまざまな分野で活用されています。

もう一度検索