アラマ

アラマ：ウラルトゥ王国黎明期の王

アラマ（在位：紀元前858年 - 紀元前844年）は、ウラルトゥ王国（または初期のナイリ地方）の初期の王であり、アッシリアの脅威に対抗してナイリの諸部族を統一し、後のウラルトゥ王国の基礎を築きました。

アッシリア史料に登場する王

アラマに関する情報は、主にアッシリアの史料から得られています。詳細な事績は不明な点が多いものの、彼はナイリの諸部族を率いてアッシリアへの抵抗を続けたことが記録されています。当時、ナイリの諸部族は、アラムとルティプリという二つの主要な勢力にまとまりつつあり、中央集権的な国家組織を形成する過程にありました。紀元前844年頃、アラマからルティプリの息子であるサルドゥリ1世へと王権が移行したと考えられています。

アラマの時代には、ウラルトゥの首都はまだトゥシュパ（現在のヴァン）にはなく、サルドゥリ1世の時代にトゥシュパへの遷都が行われました。アラマの治世は、アッシリアによる度重なる侵攻にさらされる苦難の時代でした。

シャルマネセル3世との戦い

アラマは、アッシリア王シャルマネセル3世（在位：紀元前858年 - 紀元前824年）と同時代を生きていました。シャルマネセル3世の年代記には、アラマとアッシリアとの戦いが記録されています。ウラルトゥの勢力はまだ弱く、アッシリア軍の侵入を防ぐことができず、家畜の略奪を許していました。

シャルマネセル3世は即位直後の紀元前858年にナイリへ遠征し、アッシリアとの国境にあるスフニイの砦を攻略しました。アッシリア軍は砦を破壊し、「ナイリの海」（ヴァン湖）に到達しましたが、アラマは逃亡し、ウラルトゥの勢力を完全に抑え込むことはできませんでした。

紀元前856年、シャルマネセル3世は再びナイリへ遠征し、アラマがいたアルザシュクン（Arsis-sa）の町を攻撃しました。アラマは町から脱出しましたが、アッシリア軍は町を攻略し、多数の住民を殺害し、戦車や家畜を奪いました。アッシリア軍は今回もヴァン湖に到達しましたが、ウラルトゥ軍は正面からの戦闘を避け、山に篭ってゲリラ戦を展開したため、アッシリア軍はウラルトゥを完全に制圧することはできませんでした。

軍事改革と次代への影響

アッシリアの脅威に対抗するため、ナイリの諸部族は連合して立ち向かいました。この過程で、統一された軍隊を組織する必要が生じ、ナイリの部族は軍隊としての体裁を整えていきました。アッシリア軍に対抗するため、武器の改良も進められ、皮製の武器は青銅製、そして鉄製へと置き換えられていきました。これらの改革は、次代のサルドゥリ1世の時代に結実し、ウラルトゥ王国の軍事力強化に貢献しました。

アルメニア史におけるアラマ

アラマは、アルメニア人の伝説的な始祖であるアラムの原型となったと考えられています。ただし、ウラルトゥ王のアラムはアルメニア人ではなく、旧約聖書に登場するアラム人とも直接的な関係はありません。アルメニアの歴史家モヴセス・ホレナツィの『アルメニア史』では、アラムはアルメニア人の始祖ハイクの5代後の人物とされています。18世紀のアルメニアの歴史家ミカイェル・チャムチアンは、アラムを紀元前19世紀頃の人物と考えていました。

アラマの時代は、ウラルトゥ王国が国家として成立し、アッシリアとの抗争の中で軍事力を強化していった重要な時期でした。彼の事績は、後のウラルトゥ王国の発展に不可欠な基盤を築いたと言えるでしょう。

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