アリク・デン・イリ

アリク・デン・イリ：中アッシリアの王

アリク・デン・イリ（在位：紀元前1319年-前1308年、または前1307年-前1296年）は、中アッシリア時代にアッシリアを統治した王です。彼の名前は「神の裁定は長く続く」という意味を持ち、父であるエンリル・ニラリの後を継いで王位に就き、12年間統治しました。アリク・デン・イリは、アッシリアの伝統となる毎年の隣国への遠征を開始した王として特に知られています。

治世の記録

アリク・デン・イリの治世に関する史料は限られており、現存する碑文は10にも満たない数です。彼の事績は、断片的な年代記や、息子または兄弟であるアダド・ニラリ1世の記録において言及される程度です。しかし、これらの史料から、彼がアッシリアの軍事力を周辺地域に示す上で重要な役割を果たしたことがわかります。

アリク・デン・イリは、毎年のように軍事遠征を繰り返しましたが、その中には家畜を略奪する程度の小規模な遠征も含まれていたようです。年代記には、「100頭のヒツジとヤギ、および100頭のウシをアッシュールに運び込んだ」といった記述が残されています。

軍事的な成功

アリク・デン・イリの最初の勝利は、東の隣国であるトゥルックとニギミに対するものでした。ニギミは、後のペルシアとなる地域の先住民族です。彼はまた、（ザグロス）山地と高地に住む全ての首長たちを征服し、アッシリアの北部および東部国境にいた遊牧民を服属させました。ニギミの支配者エシニは、アッシリアの侵略によって収穫物を奪われたため、報復として軍を率いてアッシリアに進軍しましたが、敗北し、軍勢は壊滅しました。アリク・デン・イリは、エシニが逃げ込んだアルヌナの町を包囲し、門と市壁を破壊したことで、エシニは降伏を余儀なくされ、アリク・デン・イリに忠誠を誓いました。

年代記には、この後、ハバルハ、クティラ、タルビス、レマク、Nagabbilhiといった地名が記録されています。これらのうち、ニネヴェに近いタルビスのみが正確な位置を特定できています。また、Halahhuの住民はアリク・デン・イリの怒りを買い、彼は254,000人を殺害したと主張していますが、この数字は当時の状況を考慮すると誇張されたものであると考えられています。

さらに、アリク・デン・イリは西方にも目を向け、レヴァント地方（現在のシリアおよびレバノン）に侵攻しました。彼はユーフラテス川中流域のKatmuḫi地方で、遊牧部族のストゥ人、アフラム人、ヤウル人を打ち破り、この地域を平定しました。

神殿の再建

アリク・デン・イリの業績は、軍事的な活動に留まりません。アッシュール市のシャマシュ神殿は泥レンガで作られていたため、老朽化が進み、泥の塚と化していました。そこで彼は「我が地に豊穣をもたらすために」、神殿の残骸を片付け、シャマシュ神殿を再建しました。また、アダド・ニラリ1世は、自身が捧げた建築物において、アッシュール神の大ジッグラトの建設をアリク・デン・イリの業績としています。

バビロニアとの戦い

父エンリル・ニラリと同様に、アリク・デン・イリもバビロニアとの間で決着のつかない戦いを繰り広げました。彼の時代のバビロニアの支配者はナジ・マルッタシュでした。アダド・ニラリ1世は、この戦いについて「我が父はカッシートの地の王（バビロニア王）の軍勢によって加えられた災いを正すことができなかった」と述べています。バビロニアとの戦いは、最終的にアダド・ニラリ1世の勝利によって決着しました。

アリク・デン・イリの治世は、アッシリアの軍事力と文化的な発展を示すものであり、後継者であるアダド・ニラリ1世の時代に繋がる重要な периодとなりました。

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