アダド・ニラリ1世

アダド・ニラリ1世（在位:紀元前1307年 - 紀元前1275年）は、中アッシリア王国時代のアッシリア王であり、その名は「アダド神は我を助ける」を意味します。彼の治世の年代記が発見されているアッシリア王としては、最も古い人物として知られています。

即位とバビロニア遠征
アリク・デン・イリの後を継いでアッシリア王となったアダド・ニラリ1世は、即位直後にバビロニア（カッシート王朝）へ遠征し、その王ナジ・マルッタシュを打ち破り、バビロニア領の一部を獲得しました。この勝利は、アッシリアの勢力拡大を示す重要な出来事でした。

ミタンニ（ハニガルバド）方面への遠征
アダド・ニラリ1世は、ハニガルバド（ミタンニ）方面への大規模な遠征も行いました。ハニガルバド王シャットゥアラ1世の軍を打ち破り、彼を服属させることに成功しました。しかし、紀元前1300年頃にシャトゥアラ1世が死去し、ワサシャッタがハニガルバド王位を継承すると、ワサシャッタはヒッタイトの支援を受けてアッシリアに対抗し、貢納を打ち切りました。これに対し、アダド・ニラリ1世は再度ハニガルバドへ遠征を行い、ワサシャッタを撃破して首都タイデを占領し、その領土はユーフラテス川にまで達しました。ワサシャッタの家族など王族はアッシュル市へ連れ去られました。

ヒッタイトとの緊張
アダド・ニラリ1世は、ヒッタイト王ムワタリに対し、「我が兄弟」と呼びかける外交書簡を送りました。当時、「我が兄弟」という呼び方は、大国（バビロニア、エジプト、ヒッタイトなど）の王に対してのみ認められていました。新興国であるアッシリアの王がこのような呼びかけをしたことに、ムワタリは不快感を示しました。ヒッタイトはハニガルバドを保護国としていたため、この出来事をきっかけにアッシリアとヒッタイトの関係は長期間にわたって緊張することになりました。

後継者
アダド・ニラリ1世の死後、息子のシャルマネセル1世がアッシリア王位を継承し、アッシリアの更なる発展に貢献しました。

※ハニガルバドはアッカド語によるミタンニの呼称ですが、この時代にはミタンニ王国が分裂した後の国々を指し、領域は異なっています。ただし、ワサシャッタなどはミタンニ王と記述されることもあります。

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