アリゾナ (小惑星)

小惑星 アリゾナ (793 Arizona)

小惑星「アリゾナ」(793 Arizona) は、太陽系の惑星軌道の外側、特に火星と木星の間に位置する、無数の小天体が集まる領域である小惑星帯に属する天体の一つです。この領域は、惑星形成の過程でガスや塵が集まりきらずに残った岩石質の破片などが数多く存在しており、小惑星アリゾナもその中にあって、太陽の周りを公転しています。

この小惑星が発見されたのは、20世紀初頭のことです。1914年4月5日、アメリカ合衆国アリゾナ州フラッグスタッフに設立された歴史ある観測施設、ローウェル天文台にて、著名な天文学者パーシヴァル・ローウェルによってその存在が確認されました。ローウェルは、火星の観測における「運河」の発見など、惑星天文学の分野で広く知られた人物ですが、彼自身が新たな天体として確認・記録した小惑星は、この「アリゾナ」が唯一であるという特筆すべき事実があります。彼の天文学への多大な貢献の中で、この小惑星発見は、彼の研究対象の幅広さを示す一つのエピソードと言えるでしょう。

小惑星アリゾナの名称は、その発見地にちなんで名付けられました。すなわち、ローウェル天文台が所在するアメリカ合衆国のアリゾナ州に由来しています。命名当時である1914年、アリゾナは合衆国の正式な「州」となってまだ日が浅く（1912年に48番目の州として昇格）、それ以前は「アリゾナ準州」（Arizona Territory）でした。発見された場所の地理的な名称を天体に冠することは、天文学において広く行われている慣習の一つであり、この小惑星の名前もまた、発見地の歴史や天文台との繋がりを物語っています。

発見以降、小惑星アリゾナは天体カタログに登録され、その軌道要素などが研究されてきました。小惑星帯に位置する天体は、その組成や軌道特性が太陽系形成初期の状況を知る上で重要な手がかりを与えてくれるため、天文学者たちにとって興味深い研究対象となっています。793番という比較的小さな番号が示すように、かなり初期に発見・登録された小惑星の一つであり、現在もその軌道情報は、ジェット推進研究所（JPL）などの公開データベースを通じて、天文学者やアマチュア観測者などが参照できるようになっています。

このように、小惑星アリゾナ (793 Arizona) は、太陽系小惑星帯における一つの天体であると同時に、著名な天文学者パーシヴァル・ローウェルの唯一の小惑星発見という歴史的な意義、そして発見地であるアリゾナ州との繋がりを持つ、天文学史の一ページを飾る存在と言えるでしょう。その存在は、遠い宇宙における小さな岩石でありながら、地球上の観測者たちの探求心と発見の物語を今に伝えています。

関連項目

小惑星の一覧 (1-1000)

外部リンク

アリゾナの軌道要素（JPL、英語）

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