アリタリア航空112便墜落事故

アリタリア航空112便墜落事故の概要

1972年5月5日、イタリア・シチリア島で発生したアリタリア航空112便墜落事故は、ローマ・フィウミチーノ空港発パレルモ国際空港行きのダグラス DC-8-43型機が、パレルモ国際空港の南西約5キロメートルの地点に墜落し、乗員乗客115名全員が死亡した航空事故です。この事故は、イタリアにおける単独機事故としては最悪の規模であり、イタリア航空史上では2001年のリナーテ空港事故に次いで犠牲者の多い事故として記録されています。

事故機について

事故を起こしたダグラス DC-8-43型機（機体記号：I-DIWB）は、4基のロールス・ロイス コンウェイ 508-12エンジンを搭載しており、1961年に初飛行を行いました。この機体は長年にわたり、アリタリア航空の主力機として活躍していました。

事故の経緯

事故当日、アリタリア航空112便は、中央ヨーロッパ夏時間20時35分にフィウミチーノ空港を定刻より25分遅れて離陸しました。22時18分、パイロットはパレルモ進入管制と交信し、その3分後にはグライドパスに乗っていることを報告しました。事故当時の視界は5キロメートルで、雲底は1,500フィート（約460メートル）でした。

22時23分、112便はモンターニャ・ロンガ山頂の約91メートル下、標高約600メートルの地点に墜落しました。衝突の衝撃で主翼やエンジンが脱落し、機体は分解しながら山を滑り落ちました。

事故原因

公式の事故調査報告書では、事故原因は特定されていません。しかし、最も有力な原因として挙げられているのは、パイロットがマニュアルを遵守しなかったことによるCFIT（Controlled Flight Into Terrain：操縦された状態での地形への衝突）です。報告書ではパイロットが飲酒していた可能性も示唆されましたが、後に否定されています。

事故の状況から、パイロットが通常の進入タイミングよりも早く降下を開始し、最低降下高度以下まで降下してしまったことが推測されています。

また、一部ではテロ攻撃や撃墜による墜落説も提唱されましたが、事故現場や残骸の状況から、これらの説は否定されています。

事故の教訓

アリタリア航空112便墜落事故は、航空安全における多くの教訓を残しました。パイロットの訓練の徹底、マニュアルの遵守、進入手順の厳守など、航空事故を未然に防ぐための対策が重要であることを改めて認識させられる事故となりました。この事故は、航空業界における安全対策の向上に大きく貢献したと言えるでしょう。

事故現場の状況

事故現場は、シチリア島の山岳地帯に位置しており、捜索活動は困難を極めました。機体の残骸は広範囲に散乱しており、事故の衝撃の大きさを物語っています。事故から長い年月が経ちましたが、現在でも事故現場には慰霊碑が建てられ、多くの人々が訪れています。

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