アリー・アブドッラー・サーレハ

アリー・アブドッラー・サーレハの生涯と政治経歴

アリー・アブドッラー・サーレハ（1947年3月21日 - 2017年12月4日）は、イエメンの政治家であり初代大統領を務めた人物です。彼は北イエメンでの軍人としてのキャリアを経て、1978年に北イエメン共和国の第6代大統領に就任しました。その後、1990年に南北のイエメン統合が実現し、統一政府の初代大統領となりました。サーレハは、34年間にわたって国家の指導者として君臨し、2012年までその地位を維持していました。

初期の人生

サーレハは北イエメン王国のアル＝アフマル市に生まれ、厳しい環境で育ちました。彼の家族はシーア派のザイド派に属しており、地域の権力構造の中では少数派でした。1958年には中等教育を中断して北イエメン軍に参加し、1960年には士官学校で学びました。1962年には北イエメン革命に加わり、その後著しい昇進を果たします。

北イエメン時代の指導力

1978年に北イエメンの大統領に任命されると、サーレハは自らの権力を強化するために大規模な粛清を実施しました。彼の政権は、様々な政党を一党制にまとめ上げる形で権力を集中させていきました。1982年に設立した「国民全体会議」は、サーレハの政権を支える主要な政党として機能し、以降も彼の独裁体制を支えました。

統一後の大統領として

1990年の南北の統合により、サーレハは統一イエメンの初代大統領となります。この時、彼は政治的な安定と経済成長を目指しましたが、湾岸戦争に関する対応では国際社会から強い非難を受けました。統一後も彼は強い権力を維持し、1994年には内戦を通じて対立勢力を排除しました。

政治的な影響力と独裁体制

サーレハの政権は、1990年代を通じて独裁的な性質を強め、2006年の選挙では77.2％の得票を得るなど、少数の競争相手を残して次々と再選を果たしました。政権の中での大統領権限は次第に強化され、彼の独裁体制に対する国際的批判が高まる一方でした。

アラブの春と退陣

2011年、アラブの春による民主化運動がイエメンにも波及し、サーレハ政権に対する抗議行動が拡大しました。サーレハは最初こそ関与の姿勢を示しましたが、デモへの弾圧を強化し、国際社会からの非難を浴びました。彼は長引く抗議活動を経て、2011年11月に権力移譲に合意し、正式には2012年2月に退任しました。

死亡と遺産

大統領退任後も彼は影響力を持ち続け、反政府勢力フーシとの連携を深める一方、2017年に彼の同盟関係は崩壊しました。フーシによって殺害されたのは、サーレハの政権運営の長い歴史の終焉を示す出来事でした。彼の政治的遺産は、イエメンの歴史における膨大な影響と今なお続く政情不安に深く関わっているといえるでしょう。

サーレハの生涯は、権力を握ることの困難さとそれに伴う政治の変遷を物語っており、今日のイエメンの状況を理解するために欠かせない存在です。

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