ザイド派

ザイド派とは

ザイド派（アラビア語: زيدية‎ , 英: Zaidism）は、イスラム教のシーア派の一派として知られています。他のシーア派とは異なり、ザイド派はイマームの血統よりも、その勇気や行動に重きを置いている点が特徴的です。この派閥は、アリーの曾孫であるザイド・ブン・アリーを支持する者たちが形成したもので、740年にはウマイヤ朝に対して反乱を試みましたが、すぐに鎮圧され、ザイドは処刑されました。これがザイド派の歴史的起点とされています。

ザイドの蜂起

680年のカルバラーの惨劇後、アリーの支持者たちの中で、特に熱心な活動を行ったのがムフタール・アッ＝サカフィーでした。彼はハサンとフサインの異母弟であるムハンマド・ブン・アリーを擁立し、クーファでウマイヤ家に対抗する大規模な反乱を起こしました。ムフタールの軍は一時、イラクの広い地域を掌握しましたが、反乱の目的を達成するや否や、勢力を失っていきました。そして687年には鎮圧され、その後、クーファではアリーの後継者をめぐる議論が続きました。

ザイドはこの状況において、740年にクーファの人々から支持を受け、ウマイヤ朝に対して再び蜂起しました。しかし、この動きはすぐに察知され、僅か数日の内に鎮圧されることとなり、再び彼は処刑されるという悲劇を迎えました。ザイド派はその後も、ザイドの思想を受け継ぐ者として発展していきます。

ザイド派の成立と信念

ザイド派は、イマームの重要性を唱えつつも、アリーの子孫であれば誰でもイマームの資格があると考える点で他のシーア派とは一線を画しています。また、イマームの無誤性を否定する姿勢も、主流の十二イマーム派との主な相違点となっています。ザイド派の法学理論は、ザイド・ブン・アリーが記した『マジュムーア・フィクフ』に基づいています。

ザイド派は、ウマイヤ朝の強権を批判し、暴政に立ち向かう中でこそ真のイマームの資格を持つ者が現れると信じていました。ザイドが示した行動は、その思想的な基盤となり、彼を支持する者たちは「堕落した支配者に抵抗する者こそが信頼のおけるイマームである」と確信していました。

地域ごとの展開

タバリスターン

ザイド派は、ザイドの蜂起を支持したアブル・ジャールード・ハマダーニーの教えを受け、タバリスターン地方へと広がっていきました。彼の理論は決定論的であり、ザイド派の主流とは異なる見解を示しましたが、後にザイド派の一部として認識されるようになりました。864年にはハサン・ブン・ザイドをアミールとする政権が立ち上がり、約40年の間存続しました。

マグリブ

モロッコを中心としたマグリブ地域でもザイド派は勢力を築きました。ここでは、ハサン家のイドリース・ブン・アブドゥッラーが中心となり、ベルベル人の支持を得てイドリース朝を建立しました。この政権の活動は、後にマグリブの他のザイド派政権と結びつきながら展開されていきました。

アラビア半島

アラビア半島のヤマーマ地方には、ウハイディル族を中心としたダウラ・ウハイディリーヤという政権が形成され、少なくとも11世紀まで存続しました。また、イエメンではザイド派のムタワッキリテ王国が1918年から1962年まで存在し、ザイド派のコミュニティが根づいていました。

結論

ザイド派は、行動力と勇気を重視し、アリーの子孫に幅広くイマームの資格を認めるという独自の信念によって発展しました。様々な地域で政権を樹立し、固有の文化や思想を形成してきました。今日でもザイド派の影響は残り、イエメンではフーシ運動を通じてその存在感を示しています。

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