アルカエオグロブス綱

アルカエオグロブス綱（Archaeoglobi）

アルカエオグロブス綱は、生物の三大ドメインの一つである古細菌に属し、特にユーリ古細菌門に含まれる一群です。この綱に分類される微生物は、例外なく非常に高い温度を好む「超好熱菌」として知られています。現在の分類では、アルカエオグロブス目、アルカエオグロブス科の1目1科に、Archaeoglobus、Ferroglobus、Geoglobusの3つの属が知られています（情報は2009年時点に基づきます）。

形態と構造

アルカエオグロブス綱に属する微生物は、その多くが1マイクロメートル程度の大きさで、不定形の球状をしています。細胞には多数の鞭毛が生えており、これを利用して水中などを活発に移動することができます。細胞の最も外側は、古細菌に特徴的なS層と呼ばれる構造で覆われています。S層は糖とタンパク質が複合したもので、細胞を保護する役割を果たしています。

属名の「-globus」は、ラテン語で「球」を意味します。これは、これらの微生物が示す丸みを帯びた形態に由来して名付けられました。

生息環境

アルカエオグロブス綱の微生物は、極めて特殊な環境に生息しています。生育できる最低温度が約60°Cと非常に高く、最もよく増殖する至適温度は約85°Cにも達するため、一般的に地上の環境では見られません。主に、酸素がほとんど存在しない嫌気的な熱水環境、例えば深海の熱水噴出孔周辺に分布しています。また、深い地下の油田からも分離されており、地球の地下深部に広がる地下生物圏の一部を構成している可能性も示唆されています。

代謝と生理

これらの過酷な環境で生きるために、アルカエオグロブス綱の微生物は独特なエネルギー代謝を行います。主なエネルギー源は、酸素を使わない嫌気的な化学反応によるものです。彼らは、有機物、水素ガス、硫化水素、さらには第一鉄（Fe²⁺）といった様々な物質を酸化することでエネルギーを得ます。この酸化反応において、電子の最終的な受け渡し役（電子受容体）として利用されるのは、硫酸塩（SO₄²⁻）、硝酸塩（NO₃⁻）、あるいは第二鉄（Fe³⁺）などです。このような特異な代謝経路を持つことで、高温・嫌気性の環境に適応しています。

系統的な位置づけ

アルカエオグロブス綱は、系統的にメタン生成菌（メタンを生成する古細菌）に比較的近いことが示されています。実際に、この綱に属する一部の種では、非常に微量ながらもメタンを生成する能力を持つことが知られています。これは、メタン生成菌との進化的なつながりを示唆する特徴の一つと言えます。

まとめ

アルカエオグロブス綱は、高温・嫌気性という極限環境に特化したユーリ古細菌です。その独特な形態、移動能力、そして硫酸塩や金属などを利用した化学合成によるエネルギー代謝は、地球上の特殊な生態系における重要な担い手であることを示しています。深海の熱水系や地下油田といった環境での発見は、地球生命の多様性と適応能力の高さを示す例として、生物学的に大変興味深い存在です。

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