アルカラ・デ・エナーレス

アルカラ・デ・エナーレスは、マドリード州に属する自治体で、19万人以上が暮らす都市です。この街は、15世紀末から1836年までマドリード・コンプルテンセ大学が置かれていた大学都市として知られ、その歴史的な街並みはユネスコの世界遺産に登録されています。また、文豪ミゲル・デ・セルバンテスの出生地としても有名です。

名称の由来

「アルカラ」という名前は、アラビア語で「城」を意味する言葉に由来しています。アンダルシア地方にも同名の都市が複数存在するため、エナーレス川流域にあることを示す「デ・エナーレス」が付け加えられました。日本語では「アルカラ・デ・エナレス」と表記されることもあります。

地勢と産業

この街は、エナーレス川沿いに位置し、マドリードからグアダラハーラに向かう途上にあります。皮革や石鹸などの産業が盛んです。近隣の都市としては、約30キロ西にマドリード、35キロ南西にはヘタフェがあります。

人口

2011年の時点で、人口は約20万3千人でした。

歴史

古代ローマ時代には「コンプルトゥム」と呼ばれていたこの地は、西ゴート王国時代には司教座が置かれました。イスラム支配下ではあまり重要な町ではありませんでしたが、12世紀に砦が築かれ、これが現在の都市名の由来となりました。1118年にカスティーリャ王国によって征服され、トレドの大司教に与えられました。その後、大司教の館を中心にキリスト教徒、ユダヤ人、アラブ人の居住区が形成されました。1496年にユダヤ人が追放されましたが、町の構造は残り、大学都市として発展しました。

大学都市としての起源は、1298年にサンチョ4世が設立したストゥディウム・ゲネラーレ（中世大学）に遡ります。15世紀末から16世紀初頭にかけて、シスネーロス枢機卿の発案により大学都市の建設が始まり、1499年にはサン・イルデフォンソ学校（現在のマドリード・コンプルテンセ大学）が創設されました。アルカラ・デ・エナーレスの特徴は、最初から町全体が大学都市として計画された点です。その後も大学施設が拡充され、学術・文化の中心地として発展しました。エラスムスなどの著名な人文主義者もこの街に招かれました。また、印刷技術が導入され、アルカラ・デ・エナーレス版多言語対訳聖書が刊行されました。

しかし、大学は次第に衰退し、1836年に大学はマドリードに移転しました。市民は大学の建物を購入し保持に努めました。19世紀には鉄道が開通し産業が発展しましたが、歴史的な地区は開発から守られました。1977年には、コンプルテンセ大学とは別の独立したアルカラ大学が開校し、再び大学都市としての活気を取り戻しました。

世界遺産

1998年、「アルカラ・デ・エナレスの大学と歴史地区」として、ユネスコの世界遺産に登録されました。世界で最初の計画的な大学都市であること、都市計画がヨーロッパやアメリカ大陸のモデルとなったことが評価されました。また、この地で多言語対訳聖書が作られたこと、セルバンテスを輩出したことも、人類の知的発展への貢献として認められました。

世界遺産登録基準は以下の通りです。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
* (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの（この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている）。

世界遺産登録区域は、スペインの歴史遺産としても保護されており、マドリード州政府とアルカラ・デ・エナーレス市によっても保全されています。

交通

マドリードからは近郊路線で約35分でアクセス可能です。

スポーツ

サッカーでは、RSDアルカラという古いクラブが活動しています。

出身者

アルカラ・デ・エナーレスは、多くの著名人を輩出しています。イングランド王ヘンリー8世妃となったカタリーナ・デ・アラゴン、神聖ローマ皇帝フェルディナント1世、小説家ミゲル・デ・セルバンテス、政治家マヌエル・アサーニャなどがいます。また、サッカー選手のアルファロやモジャもこの街の出身です。

姉妹都市

アルカラ・デ・エナーレスは、ポーランドのルブリン、アメリカのサン・ディエゴ、イギリスのピーターバラなど、世界各地の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

これらの情報から、アルカラ・デ・エナーレスは、歴史と文化が豊かに融合した魅力的な都市であることがわかります。

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