アルキメドーン

アルキメドーン（Alcimedōn）

古代ギリシャの伝承や神話には、アルキメドーンという名を持つ人物が複数存在します。それぞれの人物は、異なる系譜を持ち、異なった物語の中で語られています。中でも特に知られているのは、トロイア戦争に関わる二人の人物です。

ラエルケスの子アルキメドーン

一人目のアルキメドーンは、ラエルケスの子として知られています。彼の祖父はハイモーンと伝えられています。彼は叙事詩『イリアス』に登場し、ミュルミドーン人の一団を率いるアキレウスの忠実な部下の一人でした。トロイア戦争の戦場において、アキレウスの親友であるパトロクロスが、主君の武具を身にまとって出撃した際、アルキメドーンはミュルミドーン部隊の第五部隊を指揮する隊長として戦いました。パトロクロスがヒュートスの息子エウポルボスに傷つけられ、ヘクトールによって命を落とした後、彼の御者を務めていたアウトメドーンは一人で戦車を駆って奮戦していました。その孤軍奮闘するアウトメドーンの姿を見つけたアルキメドーンは、彼の助けに入り、代わりに戦車の操縦を引き受けたとされています。このように、彼はアキレウスとその配下の重要な局面に関わる人物として描かれています。

ロクリス人のアルキメドーン

もう一人の著名なアルキメドーンは、ロクリス地方出身の武将として語られています。彼は、トロイア戦争においてロクリス勢を率いていた武将、小アイアースの配下でした。物語はトロイア戦争の終盤、都市への総攻撃の場面で展開します。アルキメドーンは、敵の強固な城壁を突破すべく、勇敢にも梯子を駆け上がりました。しかし、城壁の上からはトロイアの英雄であるアイネイアースが防衛にあたっており、彼はアルキメドーンに向かって巨大な石を投げ落としました。投げられた巨石はアルキメドーンの頭部に直撃し、彼は梯子から転落してそのまま命を落としたと伝えられています。彼の死は、攻城戦における激しい抵抗の一場面として記録されています。

その他のアルキメドーン

上記以外にも、アルキメドーンという名を持つ人物が文献に見られます。

一つは、海賊として登場する人物です。ある伝承では、テュレニア（現在のイタリア北部にあたる地域）の海賊の一団の中にアルキメドーンがいました。彼らは船に乗っていた若者、後に神ディオニューソスと明らかになる人物を捕らえ、奴隷として売り飛ばそうと企てました。しかし、その若者は真の姿を現し、神としての恐るべき力を用いました。船はたちまち蔦に絡め取られ、海賊たちは恐怖に駆られます。そして、ディオニューソスは彼らを次々とイルカの姿に変えました。アルキメドーンもまた、この時、他の海賊たちと同様にイルカになったとされています。この物語は、神を侮辱した者への罰として語られるものです。

また、アルカディア地方にも同名の人物がいました。彼は英雄として崇められていたようで、オストラキナ山にある洞窟に住んでいたと伝えられています。彼の名は、アルカディア地方のマンティネイア近郊に広がる肥沃な平原、「アルキメドーン平原」の名の由来となったと考えられています。これは、彼の存在がその地の歴史や地理と深く結びついていたことを示唆しています。

このように、ギリシャ神話におけるアルキメドーンという名は、それぞれ異なる時代や地域、役割を持つ複数の人物に用いられており、それぞれの逸話が古代の文献を通じて現代に伝えられています。

（このテキストは古代の伝承や文献に基づいています。）

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