アルギシュティ1世

アルギシュティ1世：ウラルトゥ王国最盛期の王

アルギシュティ1世（紀元前786年頃 - 紀元前764年頃在位）は、ウラルトゥ王国の王であり、同王国最盛期の君主の一人として知られています。父王メヌアの拡張政策を継承し、領土の拡大と支配の強化に大きく貢献しました。

来歴と軍事活動

アルギシュティ1世は、父王の政策を受け継ぎ、積極的に領土拡大に乗り出しました。北東方面ではセヴァン湖まで進出し、南西方面では北シリアに影響力を及ぼしました。特に、アッシリア帝国にとって重要な鉄と馬の供給源であったアナトリア半島との交易路を脅かしたことは、戦略的に重要な意味を持ちます。これにより、ウラルトゥ王国の領土は、現在のアゼルバイジャンからシリアにまで広がる広大なものとなりました。

豊富な鉱物資源、特に銅山の獲得と、周辺の服属国からの金属の貢納により、ウラルトゥでは高度な金属工芸が発達しました。これは、王国の経済力と軍事力の基盤となりました。

都市建設と支配の強化

アルギシュティ1世は、領土支配を固めるために数多くの都市を建設しました。中でも、自身の名を冠したアルギシュティヒニリ（現在のアルマヴィル）と、現在のアルメニア共和国の首都であるエレバンの起源となったエレブニは、トランスコーカサスにおける支配拠点として重要な役割を果たしました。エレブニには、西方から連行した捕虜を入植させ、都市の発展を促しました。

また、アルギシュティ1世は、神殿や宮殿の建設を積極的に行い、用水路建設や果樹園経営といった農業振興にも力を入れました。これらの政策は、領内の安定と繁栄をもたらし、王国の基盤を強化しました。

碑文による記録

首都トゥシュパ（ヴァン）に残された碑文は、アルギシュティ1世の治世に関する詳細な情報を伝えています。発見された碑文の多くがトランスコーカサス地域から出土していることは、彼の国家経営がこの地域に集中していたことを示唆しています。これらの碑文は、彼の業績や政策を理解する上で貴重な資料となっています。

後継者

アルギシュティ1世の跡は、息子のサルドゥリ2世が継ぎました。サルドゥリ2世もまた、父王の築いた基盤の上に、王国の発展に貢献しました。

まとめ

アルギシュティ1世は、ウラルトゥ王国を最盛期に導いた王として、その軍事的才能、都市建設、そして内政手腕は高く評価されています。彼の治世は、ウラルトゥ王国の歴史において重要な位置を占めており、その遺産は後世にまで影響を与えました。

参考文献

Пиотровский Б. Б. Ванское царство (Урарту), Издательство Восточной литературы, Москва, 1959
（邦訳）『埋もれた古代王国の謎 幻の国ウラルトゥを探る』（ボリス・ボリソヴィッチ・ピオトロフスキー著　加藤九祚訳　岩波書店） ISBN 9784000001601 (4000001604)
Меликишвили Г. А. Урартские клинообразные надписи, Издательство АН СССР, Москва, 1960

外部リンク

Armenica.orgエレバン市内のエレブニ遺跡の位置および衛星写真（英語）

もう一度検索