アルコールデヒドロゲナーゼ

アルコールデヒドロゲナーゼ：アルコール代謝の中心酵素

アルコールデヒドロゲナーゼ（ADH）は、アルコールをアルデヒドまたはケトンに酸化する反応を触媒する酵素です。これは、体内でアルコールを代謝する上で非常に重要な役割を果たしています。ADHは、アルコールを酸化してアルデヒドにする反応を触媒する酵素であり、この反応はNAD+をNADHに還元する反応と共役しています。

反応機構

ADHの反応は、アルコール基の水素原子がNAD+に受け渡されることで進行します。この反応によって、アルコールはアルデヒドまたはケトンに酸化され、NAD+はNADHに還元されます。この反応は可逆的であり、条件によってはアルデヒドまたはケトンがアルコールに還元される反応も起こります。

具体的には、第一級アルコールはアルデヒドに、第二級アルコールはケトンに酸化されます。


CH3CH2OH + NAD+ ⇌ CH3CHO + NADH + H+


ここで、CH3CH2OHはエタノール、CH3CHOはアセトアルデヒドを表します。

ADHのアイソザイム

ヒトのADHには、少なくとも6種類のアイソザイムが存在し、それぞれ異なる基質特異性や反応速度を示します。これらのアイソザイムは、肝臓、胃、腸、腎臓、網膜、脳などに分布しています。特に肝臓に多く存在し、アルコールの主要な代謝酵素として働きます。

酵母におけるADHの役割

酵母などのアルコール発酵を行う生物では、ADHはアルコール発酵の最終段階で、アセトアルデヒドをエタノールに還元する反応を触媒します。この反応は、解糖系で生成されたNADHをNAD+に再生する役割を果たし、嫌気的条件下でも解糖系が継続できるようにしています。ヒトにおけるADHの反応とは逆の反応が酵母では起こっている点が興味深い点です。

EC番号による分類

ADHは、EC番号によって以下の3種類に分類されます。

EC 1.1.1.1: 第一級アルコールと第二級アルコールの両方を基質として利用できます。
EC 1.1.1.2: NADP+を補酵素として用いるADHです。
* EC 1.1.1.71: 特にレチナールをレチノールに還元する反応で知られています。

これらの酵素はすべて亜鉛イオンを補因子として含んでいます。

ADHと疾患

ADHの遺伝子多型は、アルコール関連疾患との関連が示唆されています。特に、ADH1B遺伝子（旧称:ADH2）の低活性型アレルは、アルコール依存症、咽頭癌、食道癌のリスク増加と関連付けられています。この低活性型アレルは、アセトアルデヒドの蓄積を招き、これらの疾患の発症リスクを高める可能性があります。

まとめ

ADHは、アルコール代謝において中心的な役割を担う酵素です。その反応機構、アイソザイムの種類、そして疾患との関連性について理解することは、アルコール関連疾患の予防や治療において重要です。今後の研究により、ADHに関する更なる知見が得られることが期待されます。

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