アルタバノス2世

アルタバノス2世：パルティアの動乱を生き抜いた王

アルタバノス2世（生年不詳 - 38年）は、パルティア王国の王として、激動の時代を生き抜きました。彼は、アトロパテネ王国の出身でありながら、その出自と貴族たちの支持によって王位を手にし、ローマ帝国との複雑な関係や国内の反乱に対処しながら、パルティアの安定に尽力しました。

王位への道

アルタバノス2世は、カルマニアとヒルカニアの総督であった父と、アルサケス氏族の王女の間に生まれました。彼は、パルティアの従属国であったアトロパテネの王となります。

当時のパルティアは、相次ぐ王の暗殺や追放によって、王位が不安定な状況でした。そのような中、ローマ帰りの王子ヴォノネス1世が王位に就きます。しかし、ヴォノネス1世の親ローマ的な政策は、パルティアの貴族たちの反発を招き、アルタバノス2世は、反ヴォノネス1世派の支持を受け、反乱を起こします。

西暦10年、アルタバノス2世はパルティア王を名乗り、ヴォノネス1世との間で王位を争うことになります。当初はヴォノネス1世が優勢でしたが、中央アジアの遊牧民の支持を得たアルタバノス2世が勢いを盛り返し、西暦12年にはヴォノネス1世を追放することに成功しました。ヴォノネス1世はアルメニアに逃れて王となりますが、アルタバノス2世はアルメニアに圧力をかけ、彼を再び追放します。その後、ポントスの王子ゼノンをアルメニア王に据えました。

ヴォノネス1世はローマ領へと逃れましたが、アルタバノス2世はローマ皇帝ティベリウスと協定を結び、ヴォノネス1世の政治活動を封じました。一方で、ヴォノネス1世との内戦中にバビロニアで独立勢力を築いたアニラエウスらの地位を正式に認め、国内のギリシア人ポリスの自治権を削減することで、国内統治体制を強化しました。

ローマとの関係

アルメニア王ゼノンの死後、アルタバノス2世は自分の息子アルサケスをアルメニア王に据えます。これに対し、アルメニアの反パルティア派はローマに支援を求め、ローマはイベリア王国を扇動してアルメニアを攻撃させ、アルサケスを殺害しました。さらに、アラン族を扇動してパルティアに侵入させました。また、ローマの将軍ルキウス・ウィテッリウスの政治工作によって、パルティア西部で反アルタバノス2世の動きが活発化し、ローマはフラーテス4世時代の人質であったティリダテス3世を送り込み、彼をパルティア王として擁立しました。これにより、アルタバノス2世はヒルカニアへと逃れざるを得なくなります。

しかし、親ローマの風潮はパルティアの貴族たちにとって好ましいものではありませんでした。大貴族の一つであるダハェはアルタバノス2世に軍事援助を行い、彼は勢力を盛り返して再び西部領土へと向かい、西暦36年にはティリダテス3世を追放して西部領土を回復し、ローマと協定を結んで国境を安定させました。

晩年と死

アルタバノス2世は、その強大な権力によって貴族たちと対立するようになり、廃位されてキンナムスが王位に就きました。アルタバノス2世は、従属国の一つであるアディアベネ王国に逃れましたが、アディアベネ王イザテス2世の支援を受けて復位を果たします。しかし、復位後間もなく死去しました。その後、ゴタルゼス2世が即位しましたが、彼の出自は明らかではありません。

アルタバノス2世は、激動の時代にパルティア王として、その手腕を発揮しました。ローマとの複雑な関係や国内の反乱に対処しながら、パルティアの安定に尽力した彼の生涯は、パルティアの歴史において重要な位置を占めています。

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