アルトゥル・ザイス＝インクヴァルト

アルトゥル・ザイス＝インクヴァルト

アルトゥル・ザイス＝インクヴァルト（Arthur Seyß-Inquart）は、1892年7月22日にオーストリア＝ハンガリー帝国領のシュタンネルンで生まれました。彼は中学校教師の息子として育ち、後に法律を学び、弁護士として成功を収めました。第一次世界大戦中には、オーストリア陸軍に入隊し、東部戦線とイタリア方面で従軍しました。戦争後、弁護士としてのキャリアを築く一方で、政界にも進出します。

政治経歴の始まり

1931年にオーストリア・ナチ党に加入したザイス＝インクヴァルトは、政党が力を増す中で重要な役割を果たしていきました。彼は1938年、内務大臣に任命され、オーストリア首相として短期間の政権を持ちました。彼は、クルト・シュシュニック政権下でオーストリアのナチス党内での穏健派のリーダーとなり、党内の非合法活動とは距離を置いていました。

1938年、シュシュニック首相がオーストリアの独立を放棄する意思を強めると、ザイス＝インクヴァルトは彼を支持しつつ、ヒトラーに近づいていきました。シュシュニックが内政干渉を受け入れた後、ドイツ軍がオーストリアに進駐し、ザイス＝インクヴァルトは首相としてその動きを支持しました。3月13日にはオーストリアが正式にドイツと合併され、ザイス＝インクヴァルトはオーストリアの国家代理官に選ばれました。

戦時中の役割

彼はオーストリア合併後も政権に留まり、オストマルク州国家代理官としてユダヤ人の財産没収を開始しました。1939年、ポーランドがドイツに侵攻される中で、ポーランド総督府副総督としてユダヤ人移送政策に関与しました。その後、同年5月にはオランダの国家弁務官に任命され、オランダの民政全権を掌握しました。彼はオランダで特にユダヤ人に対する過酷な政策を進め、12万人以上のユダヤ人をアウシュビッツなどの絶滅収容所に移送する計画に関与しました。

終戦とニュルンベルク裁判

1945年に戦争が終結した後、ザイス＝インクヴァルトはニュルンベルク裁判で戦犯として起訴されました。彼は侵略戦争、平和に対する罪、戦争犯罪、人道に対する罪のすべてで起訴され、証言では冷静な態度を崩しませんでした。判決では、彼のユダヤ人に対する財産没収やオランダでのテロ行為が問題視され、最終的に絞首刑の判決が下されました。

最期の言葉と死

ザイス＝インクヴァルトは1946年10月16日に処刑される際、最後に「この刑執行が、第二次世界大戦の悲劇の最終章であることを希望します」と述べました。彼は他の被告人たちとともに歴史に名を刻むこととなりました。彼の処刑後、遺体は火葬され、イーザル川に遺骨が流されました。

ザイス＝インクヴァルトの生涯は、ナチス政権の中での権力と責任、そして戦後の厳しい裁きに満ちたものとなりました。彼の政治的スタンスや選択は、当時のオーストリアやその後のヨーロッパの歴史に大きな影響を与えることとなったのです。

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