アルトホルン

アルトホルンについて

アルトホルンは、サクソルン属の金管楽器であり、E♭管を基本としています。一般的にはバリトンを小型にしたような形状で、中音域を担当します。英国式ブラスバンドでは欠かせない存在ですが、名称や形状は国や時代によって異なり、その多様性が特徴です。

名称の混乱

アルトホルンの名称は、国や時代によって大きな混乱が見られます。

イギリス: テナーホルンと呼ばれます。
アメリカ合衆国、日本: アルトホルンと呼ばれます。
ドイツ: アルトホルン（Althorn）と呼ばれ、テナーホルン（Tenorhorn）はさらに低いB♭管の楽器を指します。
メキシコ: 大衆音楽バンドでは、アルト、サクソル(saxor)、チャルチェタ(charcheta)、アルモニア(armonía)など、多様な名称で呼ばれます。

古い時代には、フランス、イギリス、アメリカでテナーと呼ばれていたこともありましたが、現在ではイギリス以外でテナーホルンと呼ぶと別の楽器を指すことが一般的です。

楽器の構造

アルトホルンは移調楽器であり、実音は記譜よりも長6度低くなります。管長は約2メートルで、第2倍音はE♭3です。3本ピストンの場合、その増4度下のA2まで出すことができます（いずれも実音）。

バンドでよく使われる音域は、実音でC3からC5まで（記譜上ではA3からA5まで）です。ペダルトーンはあまり使われません。使用音域はフレンチホルンに近いですが、管長はずっと短いため、低次の倍音が使用されます。

最も一般的な形状はユーフォニアムを小型にしたような形で、朝顔は上を向き、通常3本のピストンを備えています。しかし、ドイツ、スイス、東ヨーロッパでは、朝顔が前を向いたもの、楕円形に丸められたもの、フレンチホルン風の丸い形状のものなど、さまざまな形状が見られます。

アルトホルンとほぼ同じ管長の金管楽器には、メロフォン、バストランペット、アルトトロンボーンなどがあります。

楽器の使用

吹奏楽での使用

英国式ブラスバンド: 3本のテナーホルン（アルトホルン）が使われ、「ソロ・ホルン」「第1ホルン」「第2ホルン」と呼ばれ、重要な役割を果たします。
ヨーロッパ大陸: フランス式編成の軍楽隊で使用されていました。イタリアでもこの編成が用いられました。
アメリカ: ジョン・フィリップ・スーザは、音質の問題からアルトホルンやバリトンのようなサクソルン属の楽器を削除・削減し、代わりにフレンチホルンを増やしました。
日本: 戦前は標準的に使われていましたが、昭和30年代になるとメロフォンに置き換えられ、さらにフレンチホルンに置き換えられました。

管弦楽での使用

管弦楽曲でアルトホルンが使用されることは非常に稀です。ベルリオーズのオペラ『トロイアの人々』の初稿で使われましたが、改訂版ではフレンチホルンに置き換えられました。楽譜には「saxhorn tenor en Mi flat」と表記されています。ダンディの『鐘の歌』作品18では、「saxhorn alto」と表記されています。

ヒンデミットのソナタ

パウル・ヒンデミットは1943年に『アルトホルン・ソナタ』を作曲しましたが、出版された楽譜ではE♭アルトホルンの他、フレンチホルン、アルトサクソフォーンでも代用可能とされ、実際にアルトホルンで演奏されることは少ないです。

製造メーカー

ヤマハ
ジュピター
マルカート

その他

現代のイタリアではアルトホルンはあまり使われませんが、ウンベルト・エーコの小説『フーコーの振り子』の中でアルトホルンについて言及されています。

関連情報

管楽器
金管楽器の一覧
ユーフォニアム
* ホルン

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