アルトン・エリス

アルトン・エリス：ロックステディのゴッドファーザー、ジャマイカ音楽の魂

アルトン・ネヘミア・エリス（Alton Nehemiah Ellis、1938年9月1日 - 2008年10月10日）は、ジャマイカ音楽史における最重要人物の一人です。歌手、ソングライター、音楽プロデューサー、そしてレーベル経営者として、彼はジャマイカのポピュラー音楽の発展に大きく貢献しました。特に、ロックステディというジャンルの確立に貢献したことから、「ゴッドファーザー・オブ・ロックステディ」として知られています。また、そのソウルフルな歌声から「ミスター・ソウル・オブ・ジャマイカ」とも呼ばれ、多くのファンを魅了しました。

生い立ちと音楽との出会い

1938年、アルトン・エリスはジャマイカの首都キングストンにあるトレンチタウン地区で生まれました。音楽一家に育ち、幼い頃からピアノを習い始め、音楽の才能を開花させました。学校では音楽だけでなく、スポーツにも才能を発揮し、卓球、クリケット、ボクシングなど多岐にわたる分野で活躍しました。ミュージカル映画の劇中歌を歌ったことがきっかけで、歌うことに興味を持つようになったエリスは、タレントショーに出場するようになります。

デュオ「アルトン&エディ」としての活動

1957年、エディ・パーキンスと共に「アルトン&エディ」を結成し、プロの音楽家としてのキャリアをスタートさせました。コクソン・ドッドやヴィンセント・チンといったプロデューサーの元でR&Bの楽曲を録音し、1959年に発表した「ミュリエル」はジャマイカとイギリスでヒットを記録しました。しかし、十分な報酬が得られなかったことから音楽活動から一時的に離れました。その後、パーキンスがアメリカへ渡ったことで、デュオは自然消滅してしまいます。

フレイムス結成とロックステディの誕生

音楽への情熱を諦めきれず、エリスは1964年頃にジョン・ホルトとのデュオを経て、弟のレスリーらと「アルトン・エリス&ザ・フレイムス」を結成しました。デューク・リードのトレジャー・アイル・レコードに移籍し、「ドント・トラブル・ピープル」、「ダンス・クラッシャー」、「クライ・タフ」といったヒット曲を連発します。そして、1965年に発表した「ガール・アイヴ・ガット・ア・デート」は、ロックステディという新しい音楽ジャンルの先駆けとなりました。その後、「ロックステディ」という曲を発表し、ジャンル名が確立。

レゲエ時代とイギリスでの活動

1960年代後半にレゲエが誕生すると、エリスも時代の変化に合わせて作風を変化させました。1972年からはイギリスに拠点を移し、自身のレーベル「オールトーン」を設立。ジャネット・ケイのプロデュースなど、後進の育成にも力を注ぎました。

晩年と音楽的功績

1994年にはジャマイカ政府から名誉勲章を授与され、2006年にはインターナショナル・レゲエ・アンド・ワールドミュージック・アワードの殿堂入りを果たしました。2008年に悪性リンパ腫で亡くなりましたが、彼の音楽は今もなお世界中の人々に愛され続けています。

アルトン・エリスは、ロックステディの創始者としてだけでなく、ソウルフルな歌声とメッセージ性の強い楽曲で、ジャマイカ音楽の発展に大きく貢献した偉大な音楽家です。彼の音楽は、時代を超えて人々の心に響き、後世のミュージシャンたちに多大な影響を与え続けています。

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