アルバル・ヌニェス・カベサ・デ・バカ

アルバル・ヌニェス・カベサ・デ・バカ（Álvar Núñez Cabeza de Vaca, 1490年頃 - 1559年頃）は、スペインの探検家であり、コンキスタドールとして名を残しました。彼は初期の新世界探検において重要な役割を果たし、その記録は人類学的な観点からも貴重な資料となっています。

生涯

カベサ・デ・バカは、アンダルシア州ヘレス・デ・ラ・フロンテーラで生まれました。彼はパンフィロ・デ・ナルバエス率いる遠征隊に会計官、すなわち一等航海士として参加しました。この遠征隊は600人もの人員を擁していましたが、メキシコ湾岸での遭難により、わずか80名のみが生き残りました。カベサ・デ・バカを含む4人の生存者は、さまざまな先住民部族の奴隷として数年間を過ごすことになりました。

奴隷生活から脱出したカベサ・デ・バカは、現在のテキサス州、ニュー[[メキシコ州]]、アリゾナ州といった広大な地域を、ルイジアナ州の海岸からメキシコのシナロア州まで、徒歩で横断するという過酷な旅を経験しました。約6年もの間、彼は極度の貧困と奴隷のような境遇に耐えながら、先住民社会の中を生き抜きました。部族間を移動する中で、彼は次第に先住民への親愛の情を深めていきました。当初は奴隷として扱われていたカベサ・デ・バカでしたが、後に交易者として自由に移動することを許されるようになります。

最終的に、彼はニュースペイン植民地（現在のメキシコ）に帰還し、1537年にヨーロッパへと戻りました。その後、彼は自身の体験を記録した『La Relación（報告）』を皇帝カール5世に提出し、1542年に出版されました。カベサ・デ・バカはフロリダの総督の地位を望みましたが、カール5世はすでにエルナンド・デ・ソトを次の遠征隊のリーダーに任命していました。そのため、カベサ・デ・バカはソトの遠征隊への参加を辞退しました。

その後、1540年に彼はラプラタ川流域（現在のパラグアイ、アルゼンチン周辺地域）の総督に任命されました。北米での経験と同様に、彼は先住民に対して非常に寛容で慈悲深く接しました。彼はイグアスの滝を初めて目撃したヨーロッパ人としても知られています。しかし、政治的な陰謀によってアスンシオンで逮捕され、1545年頃には鎖に繋がれた状態でスペインへ送還されました。彼は最終的に潔白を証明し、南米での広範囲にわたる報告書を作成しました。これは、初期の『La Relación』と合わせて、『Comentarios（注釈書）』という題名で出版されています。

名前について

カベサ・デ・バカという名前は、「牛の頭」を意味します。16世紀の記録では「Aluar Nuñez Cabeça de Vaca」と記されており、「カベツァ」と発音されていたと考えられます。この姓は、13世紀にカベサ・デ・バカの先祖が、ムーア人に対するキリスト教徒の軍勢を支援した際に、牛の頭を残して山脈を通る秘密の道を示したことに由来します。カベサ・デ・バカは、自身の北アメリカでの放浪の物語の序章で、王に仕えた先祖の武功に触れ、自身が軍を率いることができなかったことを悔やんでいます。

カベサ・デ・バカの探検は、過酷な自然環境と先住民社会での経験を通じて、彼の人間性と洞察力を深めました。彼の記録は、新世界の初期の探検と先住民文化を理解する上で、非常に重要な資料となっています。

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